3年ぶりの新作『カラーズ』を10月11日に日本先行リリースし、同作を引っ提げた来日公演も果たしたベックだが、「The Guardian」のインタビューに答え、プリンスやデヴィッド・ボウイへの思いを明らかにした。
2015年グラミー賞の授賞式で最優秀作品賞を受賞した際、プリンスからトロフィーを受け取ったベックはその時の思い出について触れ、次のように語っている。
不思議だよね。こういうと本当におこがましいのはわかってるんだけど、でも、ある種のアーティストについてぼくは本当に家族のように感じるんだよ。プリンスのことは個人的には全然知らなかったけど、僕の世界の一部だった人だからね。
さらにデヴィッド・ボウイ、レナード・コーエン、トム・ペティなどといった今は亡きアーティストたちについても同じような感情を抱いているといい、次のように振り返っている。
何年か前にツアー・バスで僕のバンドのみんなと話したことが忘れられないんだ。その時僕はこう言ってたんだよ、「僕たちはまだ恵まれてるよね! まだこれだけたくさんの(伝説的なアーティストが)いるんだから」ってね。
しかしその後、こうしたアーティストたちが次々に他界したことで「あの時の会話が心に刺さったままになってる」のだという。
また、グラミー賞の授賞式でプリンスから賞を受け取ったあとでプリンスと共に舞台袖に退場していた際、ついに憧れのプリンスと話ができるかもしれないとの期待に胸を膨らませたことも明らかにしている。
一緒に退場しながら……なんとか話しかけようとしてたんだ。プリンスは話を聞こうとしてくれていたんだよ。僕はプリンスが常に目指すべき存在として上にいるということがどれだけかけがえのないことかということを伝えたかった。どれだけ自分にとって意味のある人なのかってことをね。
でも、あまりにも一瞬のことでさ。そこで誰かに腕を摑まれて写真を撮らされたんだよ、ステージから降りると必ず写真を撮らされるものだからね。そこで振り返ったらもうプリンスはいなかったんだ。
さらにベックは同インタビューの中で、『カラーズ』で目指したサウンドについても語っている。同新作のための楽曲を書き始めたのは「ちょうどファレル・ウィリアムズの“Happy”が世界中でヒットしていた頃(2013年)」で、内省的な作風の楽曲が続いていただけに、明るいサウンドを手がけたいと思っていたのだという。
『カラーズ』は昨年の11月頃には一旦完成していたものの、ミックスの録り直しのためリリースがほぼ1年延期されたことはこれまでにも明かされていた通りだ。しかし同新作がアッパーなサウンドのアルバムでもあるため、タイミング的にふさわしくないという思いがあったのだと以下のように話している。
選挙の月に出る予定になってたからね。だからなんていうか……今度の楽曲にとってはふさわしいタイミングじゃないなって思えたんだよ。
さらに、『カラーズ』では「時代に向き合っていこうということで作品を書いていったんだけど、落ち込む感じやネガティブな内容からはできるだけ遠ざかろうとかなり努力したんだ」と説明し、何度か難しい局面に陥った時には「そのまま別なレコードを作ってもよかったんだけどね。でも僕らはあまりにも大きな努力を費やしていたから、作った曲たちに日の目を見させないわけにはいかなかったんだよ」とも語った。