ベック、デーモン・アルバーンからブラッド・オレンジなどなど――ポール自ら人選した想像を絶する『マッカートニーⅢ IMAGINED』。御大のクリエイティビティとのケミストリーに否応なく期待が高まる!

『rockin'on』2021年5月号より

世界中がコロナ禍で苦しむ中で、ミュージシャンならではの戦い方を示してくれたのが昨年末にリリースされたポール・マッカートニーの『マッカートニーⅢ』だった。“Rockdown”(LockdownをRockとしている)ならば、途中まで書いていた曲や、時間がなく完成させられなかった曲に取り組みロックさせてやるというアルバムは、古いものの再生的なイメージなんかではなく、ポールならではのクオリティが高く、親しみやすい楽曲が並び、ステイ・ホームという状況を逆手に取り、内省的でありながら力強いものだった。

ビートルズやウイングスとの関係から単独録音へと向かった『Ⅰ』『Ⅱ』という過去2作と違い、世界中が向き合う姿を反映して、じっくりと一人で完成させることでポールならではの純度の高い作品となったわけだが、なんと今度は、それらをベックデーモン・アルバーンらがカバー、リミックス、再構築した『マッカートニーⅢ IMAGINED』が4月にデジタル・リリースされる。

ポール自身が人選にあたったというメンツがすごい。前記のベック、デーモンに始まりジョシュ・オム、ブラッド・オレンジ、EOB(エド・オブライエン)、セイント・ヴィンセント、クルアンビン、3D RDN(マッシヴ・アタック)、ドミニク・ファイク、アンダーソン・パーク、フィービー・ブリジャーズと、どの人をとっても聴きたくなる顔ぶれがずらりと並ぶが、いま楽しみなのはマッシヴ・アタックのロバート・デル・ナジャがリミックスを手掛けたニュー・ジャズ的な要素も持った“ディープ・ディープ・フィーリング” や美しい“ウィメン・アンド・ワイヴズ ”をセイント・ヴィンセントがどんなリミックスで聴かせるか、楽曲がずばりハマってる気がする“ディープ・ダウン”でのブラッド・オレンジなどだが、いずれにしてもすべてが注目トラックであるのは間違いなし。

現時点でドミニク・ファイクがカバーした“ザ・キス・オブ・ヴィーナス”が公開されているが(MVにはポールも参加)、とてもロマンチックなバージョンに仕上がり、期待感を高めてくれている。(大鷹俊一)



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『rockin'on』2021年5月号