昨年ニューヨークで起きたウォール街占拠運動を組織し、牽引したスタッフらが、ハリケーン・サンディ被害支援を目的に運営しているオキュパイ・サンディがインディ・バンドを揃えたラインナップのチャリティ・ライヴを行い、ヴァンパイア・ウィークエンド、ダーティ・プロジェクターズ、ザ・ウォークメン、デヴェンドラ・バンハート、リアル・エステート、キャス・マックームスらが参加した。
イヴェントはブルックリン区ブルックリンハイツにあり、歴史的建築物にも指定されている、アメリカ聖公会のセイント・アン・アンド・ザ・ホーリー・トリニティ・エピスコパル教会で行われ、会場の性格を考慮して、どのバンドも最低限のアンプと教会のグランドピアノを使った演奏を披露することになった。観客は教会の信徒席に座って、壮麗な建物の中で各バンドのパフォーマンスを見届けたと『ローリング・ストーン』誌が伝えている。
最初に登場したのは甚大な被害を受けたニュージャージー州出身のザ・リアル・エステートで、普段よりゆったりした演奏でもって"イージー"などの楽曲を届けたという。ヴァンパイア・ウィークエンドは"オックフフォード・コンマ"や"ケイプ・コッド・クワサ・クワサ"などといった人気の高い楽曲を取り上げたが、"ホワイト・スカイ"ではロスタム・バトマングリとクリス・バイオのふたりがピアノで連弾を披露するなどの聴きどころもあった。また、バンドは新曲"アンビリーバーズ"も披露した。
デヴェンドラ・バンハートは最も短い12分の演奏になったが、髪の毛も短くして髭も落としてさっぱりした様子で登場し、自身はギターも持たず連れのアップライト・ベースとデュオでベースとヴォーカルの掛け合いによる即興演奏を披露した。
ザ・ウォークメンはメンバーを減らして4名からなるホーン・セクションを加えてこの日最も荘厳なパフォーマンスでもって"ストランデッド"などの楽曲を届けたという。この日、唯一ニューヨークやニュージャージー出身ではないアーティストとして参加したキャス・マックームスは静謐なソロ・パフォーマンスを届け、続いたダーティ・プロジェクターズもリズム・セクションを抜かしたデイヴ・ロングストレス、アンバー・コフマン、ヘイリー・デクルの3人でパフォーマンスを行なった。デイヴ特有のギター演奏とともに会場中にヴォーカルが響き渡る内容となり、最新作『スウィング・ロー・マゼラン』からの"シー・ホワット・シー・シーイング"や"インプレグナブル・クエスチョン"などが特にそのゆったりした演奏で際立っていたという。バンドは最後にブラック・フラッグのカヴァー"ライズ・アバヴ"でセットを締め括った。
なお、ライヴ後にデヴェンドラはマンハッタンで建築の足場が崩落して女性が下敷きになり、その数分後に女性が遺体となって発見されたのを目撃したと、その状況を『ローリング・ストーン』誌に回想している。「あれで近隣住民の絆ががぜん強くなったんだよ。どれだけ被害がひどいものか自覚したのはいつかって? 自分たちには実際になにかやれるって意識した時だよ」