かねてから自身の高品質音源ファイル規格「ポノ」の開発を進めてきたニール・ヤングだが、自身のフェイスブックで来年の早い時期に実用化すると発表している。立ち上げにあたってはポノ専用の携帯プレーヤーの発売やオンライン音源ライブラリーが開設されるというが、ポノの特徴についてニールは次のように語っている。
「僕たちが達成していることを一番な簡単な形で説明すると、僕たちはアーティストの音楽をこれまでのデジタル音源ファイルから解放し、もともとその音が備えていたアーティスティックなクオリティを、スタジオでその音を聴いた時のレベルにまで復元することに成功したということになるんだ。だから、原初的なパワーを備えているんだよ。ポノを初めて聴くという体験は、燦々と太陽がふりそそぐ日に暗い閉め切った映画館の中から突然屋外に出た時に受ける衝撃に匹敵しているんだ」
ライブラリーにはアーティストが認可したスタジオ・マスター音源が提供され、この音源を聴く携帯機器はイギリスのオーディオ・メーカーのメリディアンが開発に当たっていて、「アーティストの音楽の豊かさをあなたに開放する」とニールは説明している。音源の使用についてポノはすでにワーナーとの合意に達していて、2012の時点でさらにユニバーサルとソニーが関心を示していたと伝えられている。
その一方で、マイ・モーニング・ジャケットのジム・ジェイムスなどは、これまでアレサ・フランクリンの名曲"リスペクト"を何度も買い直してきたが、ポノの登場でまた買い直さなければならないのかと、新しい規格が開発されることへのユーザーとしての率直な感想を述べているが、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーなどはポノの音質について「犬の聴覚じゃないとわからないようなそういう微妙な問題じゃないんだ。ものすごくドラスティックな違いがあるんだよ」とこれまで『ローリング・ストーン』誌に語っている。
ただ、トレント・レズナーがドクター・ドレーのオーディオ・メーカー、ビーツ・バイ・ドクター・ドレーと開発したストリーミング・サービス「デイジー」も今年の年末にサービスの開始を予定していて、iTunesの放送サービス、iTunes Radioの旗揚げも秒読み段階と言われているだけに、様々なテクノロジーの新規格との競合にも見舞われることになると『スピン』誌は指摘している。
なお、ニールが今回発表した「ポノ」サービス開始への声明の全文訳は以下の通り。
「音楽を愛するみんなへ
今日は嬉しいことにとてもいい知らせがあるんだよ。僕たちチーム・ポノに携わっている人間全員が今2014年の早い時期の立ち上げに向けて準備を怠りなく進めているんだ。
僕たちが達成していることを一番な簡単な形で説明すると、僕たちはアーティストの音楽をこれまでのデジタル音源ファイルから解放し、もともとその音が備えていたアーティスティックなクオリティを、スタジオでその音を聴いた時のレベルにまで復元することに成功したということになるんだ。だから、原初的なパワーを備えているんだよ。
ポノを初めて聴くという体験は、燦々と太陽がふりそそぐ日に暗い閉め切った映画館の中から突然屋外に出た時に受ける衝撃に匹敵しているんだ。慣れるのにかかるのは1秒。それからはディテールが素晴らしく再現された明晰なリアリティに浸ることができるんだ。
この音楽は感動をもたらすんだ。だから、感じることができる。ポノミュージックをたくさんのミュージシャンが支持してくれているのもそのせいなんだ。これはミュージシャンの作り出すアートを尊重する重要な使命だからなんだ。ミュージシャンというのはこういう音で自分たちの作品を聴いてもらいたいと思っているからなんだよ。
ポノはまず音源から始まっていて、僕たちはアーティストが認可したスタジオ・マスター音源へのアクセスを特別に許してもらっているんだ。そこからはメリディアン社のずばぬけたパートナーたちとアーティストの音楽の豊かさをみんなに開放するための作業を行っている。この音楽を聴くことに匹敵するものなど他に何もないわけで、僕たちはそれをすべての音楽を愛する人たちが経験できるように懸命に努力を続けているんだ。
また、ポノを現在購入して聴かれているどんな音源とも変わらずに容易に入手できるものにするというのもぼくたちが取りかかっているもうひとつの使命だ。というわけで、立ち上げにあたってはポノの携帯プレーヤー(ぼくが以前デイヴィッド・レターマン・ショーで披露したものを改良したもの)と、みんなの好きな音楽がポノミュージック品質で揃ったオンライン・ライブラリーの2つを同時に紹介することになる。音楽を新しく感じるために必要なものがすべて揃うことになるんだよ。
新しい情報などは追って発表するので、最新の情報を知りたければフェイスブックやツイッターでぼくたちをフォローしてください。あなたの目の前に現れた時にはぜひポノを試してみてほしいし、その時音楽の魂と触れられることを願っています。
ポノミュージックを代表して
ニール・ヤング」