デヴィッド・バーン、1%の富裕層のせいでNYのカルチャーが衰退していると語る


元トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンはニューヨークの文化は1パーセントの富裕層に破壊されつつあると語っている。

トーキング・ヘッズはニューヨーク・パンク以降の同都市のシーンから台頭し、ニューヨークを代表するバンドとして知られ、その後のデヴィッドもニューヨークを代表するアーティストとして活動を続けてきたが、時事問題などについてのアーティストの意見を伝えるサイト「クリエイティヴ・タイム・リポーツ」にエッセーを寄せていて、文化の発信地としてのニューヨークの役割は衰退していると警告している。

記事の中でデヴィッドはニューヨークを身体と心にたとえていて、犯罪率の劇的な低下や公共交通機関の改善、公園の整備など、身体にあたる機能は改善されているのに、「市の文化的な側面、つまり心に当たる側面は1パーセントの富裕層に奪われてしまっている」とデヴィッドは指摘している。

特にマンハッタンやブルックリンなど、かつてはミュージシャンや作家、ダンサーや俳優、映画作家などの卵が育まれる一帯だった地域が今や富裕層が独占的に占拠するようになってきていて、新しい才能を持った人たちにはもう住民として入り込む余地はなくなっているとデヴィッドは指摘。中流に当たる階層が住んでいける土地柄ではなくなってきているので、クリエイティヴィティのハブ都市であったはずの都市機能が変質してきているとデヴィッドは説明している。

もちろん、富裕層は寄付などを行い、公共施設などにそうした資金は回されているが「それは金持ちが自分のクラブハウスを修繕しているようなものに過ぎない」とデヴィッドは綴っている。

「僕たちみんなのような普通の人々や市の健全にとっては何の効果も及ぼさない。僕たちが影響を受けるとしたら、ため息をつくのを強いられることくらいだ。『こういうお金の遣い方をするんだよね』と。そして、そうすることで彼らが税金を免除されていることくらい、僕たちは知っている」

すでにアブダビや香港のような、ただの金融都市になりかけているニューヨークなどには住みたくないというデヴィッドは次のように希望を託している。

「確かにニューヨークの身体の改善は進んでいる。けれども、市のインフラはまだ各所で崩壊が進んでいて、さらなる修繕が必要だ。今後、社会面と経済面の問題が改善されれば、折り返し地点くらいまでは行けたことになる。そうすれば、巨大で経済的にうまく回していける、クリエイティヴな意味でエネルギーに満ちた都市のモデルに本当の意味でなれるだろう。ぼくが住みたいと思うのはそんな都市なんだ」