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限界に挑むすべての人を鼓舞するようなコーラスが鳴り響き、目眩く展開(大森元貴によればこの楽曲は10年ほど前にオリンピックを意識して書いた曲を取り込んだ「組曲」になっているという)が努力と挑戦の過程にあるすべての感情をかき混ぜ浮かび上がらせていく。“ライラック”が“青と夏”の「その先」を描いた楽曲だったとするなら、この曲は「全国高校サッカー選手権大会」の応援歌となった“僕のこと”の続きかもしれない(奇しくも今年のパリ五輪に臨むサッカー日本代表には、あの年の選手権に出ていた選手もいる)。あの曲でミセスは《ああ なんて素敵な日だ/幸せに悩める今日も/ボロボロになれている今日も》と歌っていたが、その言葉は今回も《綺麗な花もいいけど/傷をも誇れる花になろう》というメッセージとなって生きている。曲名は古代ギリシャの著述家の名前。この曲にはギリシャで生まれたオリンピックの歴史も、大森の10年間も、“僕のこと”からの5年間も、あらゆる時間が折り重なって投射されている。(小川智宏)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年9月号より抜粋)
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