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 フラカン、detroit7と極上のロックンロールで熱されたMOON STAGEを強襲する次なる刺客は野狐禅。ふと気付いたのだが、彼らを待ち受けるオーディエンスが異常なほど前に詰めている。きっとここにいる誰しもが竹原ピストルの渾身の言葉をできる限り近くで受け止めたいのだ。そして19:02、ぐっと凝縮された空間に二人(+サポートドラム)が登場し、ゆったりとしたギターのフレーズから『あじさい』を歌い始めた。無骨に、まっすぐに、そしてどこまでも優しく響く竹原の声。“東京紅葉”、“ならば、友よ・・・”とたて続けに、喉よ裂けよとばかりに叫ぶ竹原の横には、華奢な体を前後に揺さぶりながら懸命に鍵盤を叩く濱埜の姿。お互いがお互いを強く必要としているように見えて、否応なしに泣けてくる。ふと周りを見渡すといつの間にかMOON STAGEはパンパンに膨れ上がっている。みんな踊っているわけでもないし、合唱しているわけでもない。だけど、一言一句逃すまいとじっと直立しているオーディエンスの表情がこの空間の「熱さ」を物語っていた。







 そして、MOON STAGEはここから一挙にクライマックスへ向かう。フジファブリックの登場だ。エントランス付近まで隙間なく埋まったフロア。その期待に応えるべく、いきなりの必殺アンセム“ダンス2000”からライヴはスタート。肉体的なグルーヴに乗って、みんな跳ねる、跳ねる。床が完全に弾んでいる。少し声をうわずらせながら、観客を煽情していく志村。それにしても、この日のフジファブリックは本当に神懸かっていた。シュールな歌詞も、妄想が爆発するストーリーも全て快楽誘発装置として機能している。《飛び出せレディーゴーで 踊ろうぜ だまらっしゃい》(“TAIFU”)と発語するたびに半端じゃない快感が押し寄せるし、楽曲の随所で爆発する志村の妄想はMOON STAGEの風景を一変させるための起爆剤となっていく。そして、何よりも5つの音が一つに重なったときに生まれるしなる筋肉のようなグルーヴが有無を言わせずオーディンスのテンションを上げていく。“陽炎“に至っては、鍵盤もギターも全て打楽器に聞こえるほどに暴力的なリズムが鳴っていた。熱狂的なライヴはそのまま盛り上がり続けて“花屋の娘”でフィニッシュ。さらに、アンコールでは“茜色の夕日”できっちりと叙情的な一面も見せてくれるという周到さ。 MOON STAGEの歴史にいきなり伝説誕生か!?と思わせる完璧なステージだった。(小柳大輔)

野狐禅 フジファブリック

1 あじさい
2 東京紅葉
3 ならば、友よ・・・
4 少年花火
5 自殺志願者が線路に飛び込むスピード
6 ぐるぐる

1 ダンス2000
2 TAIFU
3 NAGISAにて
4 陽炎
5 打上げ花火
6 花屋の娘

EN:茜色の夕日