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御存知、約2年前に惜しまれながら解散したスーパーカーのナカコーが立ち上げた新プロジェクト、iLL。今年5月に発売されたアルバム『Sound by iLL』はサウンドテクスチャーが想起させる根源的な感覚を追求したようなエレクトロニックな側面の強いものだったが、さすがはナカコーである。ライヴでは、その本質的な感覚のところだけを取り出して、バンドによって肉体化してみせるのだ。それは素晴らしいものだった。セットリストはわずか2曲。1曲目の “flying Saucer”が10分強。2曲目の“Ghost!!!”は約20分。しかし、スクリーンの張られたステージに名うてのメンバーが集まったこのライヴにまったく冗長さはなかった。ステージ上ではドラムやベースの超人的なプレイが入り乱れ、そこにナカコーのギターのディストーションやキーボードのレアな音像が入ってくることで、「ポップ」なものが立ち上がってくるとでも言おうか。音と音が出会うことで生まれる原始的な魔力みたいなものがiLLのステージにはあるのだ。年始へのカウントダウンを目前にして、自分の知覚を覚醒させられるような、そんな体験だった。(古川琢也)