エモーショナルな爆音と美しいヴォーカルのハーモニー・ワークで、立ち上がりからその世界観を叩きつける藍坊主。のっけからまだリリースもされていない新曲を披露しているのだが、観る者を釘付けにするようなパフォーマンスである。続いては鍵盤の旋律が響いてスタートする“ジムノペディック”だ。届くか届かないか、そんな領域に手を伸ばすようにして走るhozzyの歌が、昂ぶる感情を巻いて場内に反響するようだ。
物語の波状攻撃のように編みこまれたアレンジと、豊かなヴォーカル・ハーモニーがとめどなく溢れ出す。藍坊主はそのキャリアの中で、かなり大掛かりなバンド・サウンドの変遷を経てきたけれども、今やそれが美しい蝶の成虫のような、激しさの中にも華麗さと優美さを感じさせる姿になった。青く情熱的な名曲“鞄の中、心の中”をプレイし終えると、「2010年1月にリリースされるニュー・シングルです」と紹介して“伝言”へと傾れこんでゆく。青く若い感情を物語として伝える藍坊主のロックは、しかし拙くはないしむしろ豊かで普遍的な強さを誇るものだ。ただの過ぎ去りゆく時間ではない、永遠の輝きとともに記憶されるべき若き日の心が、ステージ上に、フロアに、描き出されていた。(小池宏和)
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