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客電が落ちたままの巨大なEARTH STAGEの空間に響き渡る“RL”のハイパーなサウンド。そしてブレイクの瞬間、「COUNTDOWN JAPAN、サカナクション」という山口一郎の声が厳かな宣誓のように響き渡る――COUNTDOWN JAPAN 11/12の1日目、ここEARTH STAGEのトリを飾るサカナクションのアクトは、「みんな用意はいいかー!」という山口の絶叫から、“モノクロトウキョー”でメッセ激震の熱狂空間へと突入する! 聴く者の神経細胞を研磨してバキーンと覚醒させるような、5人のエレクトロでソリッドでハイブリッドなアンサンブルが、彼らの登場を待ちきれなかった様子のオーディエンスを高らかなジャンプへと導いていく。さらに“アドベンチャー”のひときわ力強い歌とプレイの1つ1つが、EARTH STAGEを揺らし踊らせ、歓喜の向こう側へと僕らをぶん投げるようなパワーでもって響いてくる。ステージとフロアが一丸となってクライマックスへ迫っていくスリルが、オーディエンス1人1人の熱気をじりじりと高めていくのがわかる。時代と、シーンと真っ向から向き合い『DocumentaLy』という名盤を完成させ、幕張メッセ単独公演まで成功させた2011年のサカナクション。その圧倒的にタフで冷徹でエモーショナルな「今」の結晶のようなアクト。もう、最高だ。

《仮面被ったスノッブばかり 僕はもう死んだんだ》という鋭利な歌詞すらダンスとロックのエネルギーに変えてみせる“仮面の街”。静謐なピアノのイントロから、聴く者の心の暗部すら真っ白に照らし出すようなサウンドスケープへと昇り詰めた“エンドレス”。メッセどころかこの国丸ごと極彩色に染め上げるような壮麗なるコーラスで珠玉の悦楽空間を描き出した“『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』”……ひたすらノンストップで曲を畳み掛け、高揚感のその先へと脇目も振らずに邁進するサカナクションの5人。草刈愛美のしなやかな極太ベース・ラインが熱気の中でうねり回る“ホーリーダンス”。レーザー光線飛び交う中、5人がステージ前列に並んでエレクトロ・セッションを繰り広げた“DocumentaRy”。シンガーとしてのみならず「凛としたアジテーター」としてステージ狭しと歩き回り、満場のクラップとダンスを生み出していく山口。そのまま“ルーキー”の轟々たるビートで大地を震わせたところに“アルクアラウンド”! 《嘆いて 嘆いて》というフレーズを明日へ/希望への足掛かりとしてネガポジ変換して2010年代の「時代のメッセージ」にすることができたのも、ひとえに山口はじめ5人の高純度な情熱と意志あればこそだった――ということを、あまりに目映い音の1つ1つがびりびりと伝えてくる。「次で最後の曲です! 最後まで踊ってねー!」という山口の言葉とともに披露されたナンバーは“アイデンティティ”! 1歩たりとも立ち止まることなくラストまで真っ直ぐに駆け抜けた5人。EARTH STAGE一体となったハンドウェーブが、割れんばかりの一大シンガロングが、幕張の夜を貫いて響き……本編終了。

間髪入れずに巻き起こったアンコールの手拍子に応えて、再びオン・ステージした5人。「後ろまで人ハンパない! おーい!」とフロアに呼びかける山口。「2011年、いろんなことがあったね。悲しいこともあったし。でも、このフェスが終わったら、2011年も終わっちゃうんだよね。そうしたら『2012年の音楽』も生まれるだろうし。でも、背負ってきたものは――忘れるわけじゃないんだけど、いつもそのことを考えてるかっていったら別じゃん? ただでさえみんな毎日ぎゅうぎゅうだと思うんだけど……頑張っていきましょう!」とひと言ずつ真摯な言葉を紡ぐ山口に、熱い拍手が沸き上がる。「こういうステージに立ててる自分を誇りに思うし、集まってくれてるみなさんにも感謝してるし。来年もこうやって足を運んでもらえるバンドになりたいと思いますので。来年もサカナクションと音楽をよろしくお願いします!」。1日目、正真正銘のラスト・ナンバーは“ナイトフィッシングイズグッド”。痺れるような余韻と「また来年会いましょう!」という山口のコールが、強烈なヴァイブとなって、いつまでも胸に残った。(高橋智樹)