22年前、やけにファンシーな名前のバンドが広島からデビューした。バンドブームという荒波の中であっという間に人気を獲得し、メンバー全員が曲を書いて歌うというスタイル、メンバー全員の音楽的趣向がバラバラという統一感のなさが長所に転じた楽曲の多様性、単身赴任のサラリーマンの悲哀や鎖国開国までをも歌うユニークな歌詞、高い演奏力と遊び心満載のライブパフォーマンス、「面白けりゃ何でもいいじゃん」という姿勢、センスのいいグッズやジャケット……と、やることなすこと破天荒かつ真剣で、アイドル的人気と評論家に絶賛される高い音楽性を両立させた唯一無二のバンドだった。深夜のラジオ番組で突然活動休止を発表したあの日から16年、まさかフェスという大舞台で彼らのパフォーマンスを観ることができるとは誰も予想していなかっただろう。そう、記念すべき10年目のROCK IN JAPAN FES、大トリを任せるのは、数々のミュージシャンに影響を与えた伝説のバンド、ユニコーンである。
会場を隙間なく埋め尽くす観客に迎えられた5人。ツアーでも毎回チェンジしていたおそろいの衣装は、薄いブルーのストライプ柄のつなぎで、右袖についている「KK50」というマークは「川西幸一50歳」という意味だろう。ダブルピースを出す民生。微笑むテッシー。それぞれの持ち場について楽器を鳴らした瞬間に悲鳴のような歓声があがり、16年ぶりのニューアルバム『シャンブル』の楽曲と、盛り上がり必至の代表曲を織り交ぜてやっていく。「はじめまして。ユニコーンでぇ〜す」という(フェス皆勤賞の)民生の挨拶もあったが、本フェスお初のユニコーンは、とにかく、すごい。川西は汗を撒き散らしながらドラムを叩き、EBIは微笑みながら確実にベースを鳴らし、テッシーは高速テクでギターソロを披露し、阿部は自在にキーボードを操り、民生はハンドマイクで5万人を煽る。分厚い音が織り成すグルーヴはキラキラした輝きを放ち、ユニコーンを知らない世代のオーディエンスも両腕をあげて浴びている。今年前半に行われた全国ツアーでは、16年という歳月がまるで一瞬だったかのような現役感、というかむしろパワーアップしてるじゃん、というライヴを見せつけたが、すごいエネルギーとパワーはフェスでももちろん健在。
民生「ちょうどよかったんじゃないですかねえ。雨も降らなかったでしょ、3日間。よかったよお。ほんとによかったよ。10年続いてるんですよ? ここ。すごいよね」
EBI「お客さんがすごいね。これが5万人か。うしろのほう見えてる?」
民生「あんまり見たことないよね。今年はタイミング的に、わけあってこれをやってますけど。まあ、わけはないんですけど、出れてよかったです。ありがとうございます」
というほのぼのしたやりとりのあとは怒涛のキラーチューン連発になだれこみ、オーディエンスはとぐろを巻いている躁状態。会場の半端ない一体感を感じさせたままアンコールへ突入し、笑顔でラストのアンセムをスタート。誰にも真似できなかったバンドは、誰にもできないステージを見せて、ステージを去っていった。バカバカしいギャグに大笑いしながら何度も涙がこぼれそうになってしまったのは、彼らがロックの本当の楽しさに真摯に向き合っている結果だろう。多幸感に包まれるマジでガチで最高のライブをありがとうございました。(上田智子)
ユニコーン のROCK IN JAPAN FES.クイックレポートアーカイブ