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昨年は「復活」、今年は「さらに前進!」――Theピーズ!
レイク・ステージ 16:35

8/3 18:40 UP
昨年、ファン感涙の復活を果たし、昨年のロック・イン・ジャパンにも登場してくれたピーズが2年連続登場! レイク・ステージには、昨年の時よりも格段に多いお客さんが彼らの登場を待ち構えている。“サイナラ”“無力”という、復活アルバム『The ピーズ』からの2曲がまず披露されて、会場は沸きに沸いている。そして、お客さんの顔も、デビュー当時のピーズのことは知らないだろうな、と思われる若いお客さんが多いのだ。この1年間の活動によって、ピーズは「90年代ロック・ファンにとっての伝説」のみならず、「現役ロック・ファンにとってもリアルにカッコいいと思えるバンド」になったのだな、とつくづく思う。“サイナラ”も“無力”も、『The ピーズ』全体も、ディープになりすぎてはいないし、かと言ってキャッチーになりすぎてピーズらしい虚脱感が失われてしまったというわけでもない。「懐かしい曲大盛り上がり、新曲はシーン」というのは、海外のバンドの復活ライヴなどではよくある光景だったりするが、ピーズは新曲がこれだけ盛り上がるのだ。これほど幸せで、カッコいい復活はないよ。
「イエー! おまっとうさんだ!」。相変わらずの口調ではるさんが言う。「おとといはデカイステージでやったんだけどクソ寒くて、コーヒーにバーボン入れて飲んだりしてたんだけど、今日はクソ暑い…………ロックンロールじゃないか!」とお客さんを煽って歓声。でもそのあとに「……はあ」と溜息をついて笑わせる。ホント、相変わらず。
さっき「新曲がこれだけ盛り上がる」と書いたが、もちろん彼らは古くからのファンも忘れてはいない。89年のデビューアルバムから、“ブリーチ”! しかもアレンジが変わってるいる。原曲は破れかぶれの疾走パンクだが、今回は凄いグルーヴィーなアレンジ。しかしアビさんの酔拳の達人のような超絶ギター・ソロが終わったらギア・チェンジ! 「ウェラトーン ブリーチ」の繰り返し部分からスピードが速くなり、爆発! 原曲以上のスピードで駆け抜けたのだ。そこからは“君は僕を好きかい”“シニタイヤツハシネ”“鉄道6号”、“とどめをハデにくれ”という復活前の名曲たちを続けて披露。そうそう、“鉄道6号”と“とどめをハデにくれ”の間に新曲が披露されている(過去の曲の中に、何も言わずに新曲をおりこむのが、またニクいんだよな)。その新曲“ギア”は、ピーズのバラード・テイストとバッコバコの疾走チューンが絶妙なブレンド具合で成り立っている、といった印象のグッド・チューン。ピーズのロック・チューン開発能力の健在ぶりと高さを見せつける曲だったと思う。
“とどめ~”を終えたのち、「またいつかどこかで会えたら」と会場に向けてはるさん。続けて問いかける「会いたい? 会えたらね。……僕は会えて嬉しかったです」。この人は思わぬところでこういうセリフを吐くから泣けるんだ。
最後の2曲も新作からのものだった。名曲“グライダー”、そして“生きのばし”。最初にも書いたけど、脱力感、虚無感、絶望感で満ちた世界は、まるで宿命であるかのように、ピーズの曲の根幹であり続けている。でもこの2曲には、その「宿命」を受け入れることで芽生えた「未来への希望」のほうを、より強く感じとることができるのだ。もう一度繰り返してしまうけれど、これほど幸せで、カッコいい復活はないよ、ホント。
中盤のMCではるさんは、「俺ら去年は『復活!』とか言って話題になったけど、今年はなんもねえな。『解散!』とか言って(会場を)満杯にすっか!」なんて、昔のピーズを知っている人にとってはシャレにならない冗談を言っていたけれど、そんなこと言わなくても、この会場が満杯になる日はきっとやってくるはずだ。来年もこうして、昔の曲も新曲もどんどん鳴らしていってほしい、心底そう思えるライヴだった。(柳憲一郎)
はるさんのMCに、拍手がわきおこる

「ピーズかっこよかった! 暑いけど、
水分補給して楽しんでます」