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いっそんこと磯部正文の新バンド、マーズ・リトミック。5月に発表したアルバム『Range over hill and dale』をひっさげて、ひたちなかに初登場である。昨年・一昨年とCORNERとして出演、色彩豊かなアコースティック・ショウを見せてくれた磯部だが、この人はやっぱりロックだ。「マーズ・リトミックはじめます」と一言告げ、すぐさま“A song of a soldier”でライヴをスタートさせると、明快なメロディとドライヴィンなギター・リフで全力疾走である。一刻の猶予も許されないとでもいうように、曲間をまったく置かず畳み掛けられる性急なロックンロール。喉の渇きを一気に癒すように、そのすべてを飲み込もうとするオーディエンス。アルバムのリード曲“ポン・デ・アスカール”で盛り上がりは早くも絶頂に達する。客席から巻き起こる「いっそん」コール。「おかえりー!」という声も聞こえる。そう、みんなこんな磯部を待っていたのだ。衝動をギターにぶつけ、叫び、歌う。切なさが胸を締め付ける“カカオ82%”にも、ダンサブルなビートが気持ちいい“New Caledonia’s Mail”にも、熱いエモーションがたぎっている。「暑い!」と何度も叫んでいた磯部だが、ぐんぐん上がっていく気温以上に熱いものが、間違いなく彼の中から湧き出ていた。(小川智宏)