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SEが流れ始める中、スネオヘアーの声が聞こえてきた。「『アブラクサスの祭』って映画なんですか? 何ヘアー? スネオヘアー? スネオヘアーが初主演? 最初で最後? 晩秋から公開? ああ、そうですか。分かりました」。自身が出演する映画の宣伝からスタートして、お客さんの間から和やかな笑い声が起こる。そして、スネオヘアーがバンド・メンバーを率いて登場したのだが、この布陣がとんでもなくすごかった。アイゴンこと會田茂一(G)、中尾憲太郎(B)、小松正宏(Dr)という最高のプレイヤーが揃っていたのだ。1曲目"逆様ブリッジ"から素晴らしいサウンドが天高く広がる。爽やか疾走感を放ちながら展開しつつ、豊かなドラマ性を溢れ返らせる様が、とにかく快感を与えてくれる。 
"トキメキシュナイダー"を終えて最初のMCタイム。「メーカー契約も事務所も切れて、離婚もし、何もなくなりました」と、自虐気味に語り始めたスネオヘアー。時折インチキくさい英語と片言の日本語も交えて語る様は、まるで外国人アーティストだ。演奏では存分に魅了しつつも、喋りだすと過剰なまでにサービス精神を大いに発揮する相変わらずのスネオヘアーであった。

「オープニングSEは昨日の夕方に作りました。一人で作ると本当に寂しくて辛い。近所の子供たちの声が聞こえてくるわけですよ」というような、何だか切ない告白を経て聴かせた"ハレルヤ"は、レナード・コーエンの楽曲のカヴァー。この曲は映画『アブラクサスの祭』のエンディング・テーマだという。美メロをスネオヘアーが甘酸っぱく歌い上げ、お客さんはうっとりと聴き入っていた。そして、最後を飾った"因果"が圧巻! 終盤で劇的な熱量を帯びながらバンド・アンサブルが広がってゆき、トランス状態へと入ったスネオヘアーはアンプに乗っかって飛び降りたり、エフェクターやアンプのツマミを一心不乱に操作しながら強烈なノイズを生み出してみせる。3人のメンバーが奏で続ける凄まじい音像に包まれながら、興奮した表情でステージを去ったスネオヘアー。最高の興奮を味わえたクライマックスだった。(田中大)