メニュー


夕日の光が雲を赤く染めて、湖からの涼しい風がレイク・ステージに吹き渡ってきた。一日目のレイク・ステージも遂に最後のアクト、スネオヘアーが登場だ。和田アキ子“どしゃぶりの雨の中で”のSEにのってメンバーがステージに飄々とあらわれると、それだけで沸騰せんばかりの熱気に包まれていたレイク・ステージの空気がふわりと軽くなったような心持ちになる。
サンボマスター、ザ・バックホーンと熱い爆音のライヴが続いてきたこの日のレイク・ステージ。けれど、スネオヘアーの見た目は決して「熱血」じゃない。本人だって、失礼だけど、決して夏が似合いそうなキャラじゃない。けれど、そんな佇まいのまま、まるで異世界に連れていくように、観るもの全てを彼独特のポップ・ワールドに連れていってしまう。それがスネオヘアーの流儀だ。そして今日も、その独特のセンスはバッチリ発揮されていた。1曲目の“このままこうして”、そして“てっぺん”と、次々と鋭角的なギター・リフが切り込み、ポップなメロディの上昇気流が巻き起こっていく。
「大丈夫~?」と客席からの声に、弱々しく「うん、大丈夫」と応えたり、登場していたときからずっとハメてたメガネをはずして「くるりみたいでいいかなと思ったけど、アジカンみたいでいいかなと思ったけど、邪魔だった! 両目とも視力2.0だった!」と言ったり、相変わらずMCでは苦笑を誘うスネオヘアー。
が、中盤に披露された新曲の“ストライク”のギター・サウンドのスケール感、迷いないメロディの透明感は、素晴らしいの一言だった。スネオヘアーの歌声にある芯の強さが、しっかりとした形で伝わってくる。さらにはサイケデリックな“パイロットランプ”、そしてゆったりとしたとバラードの“JET”と続く。ねばりっこいファズ・ギター2本が絡み合う中で、まっすぐなその歌声は、レイク・ステージを徐々にスネオヘアーの“宇宙”に包み込んでいた。
いつのまにか日がすっかり暮れて暗くなっていたレイク・ステージ、ラスト・チューンは“セイコウトウテイ”。完璧なハーモニーが染み渡って、思わず泣けてくるほどのメロウな空気が満ちていた。そして当然のように湧き上がる「スネオ! スネオ!」のコール。アンコールで出てきたスネオヘアーは、楽屋にあったのを着てきたという“ROCK STAR”Tシャツを指し示して、
「ロック・スターってまさに俺のことじゃねえか!って思ってさ。……でも、ロック・スターじゃねえな。あんまでけぇ声で言わねえでくれよ……。(小声で)ロック・スターってさ…………(突如)わかりました! 最後はスネオらしい相撲で寄りきろうと思います!」
と語る。MCはやっぱり掴みどころがなくて、へなへなと脱力気味に面白い。
しかし、ラストの“打ち上げ花火”は圧巻だった。たゆたうようなドラムのグルーヴに、浮遊するギター・アルペジオ。そして夜闇の中に溶けていくようなスネオヘアーのヴォーカルが、レイク・ステージをゆったりと満たしていく。洪水のようなフィードバック・ギターが極彩色のサイケデリアを描き、美しいメロディがその上で弧を描いていく。まさに、スネオヘアーの真骨頂の楽曲が夜空を染め上げ、終わった。
 ロック・イン・ジャパン初登場にして、堂々とトリを飾ったスネオヘアー。静かな余韻が、しばらくの間ずっと暗くなったレイク・ステージに残っていた。(柴那典)

1. このままこうして
2. てっぺん
3. ストライク
4. パイロットランプ
5. JET
6. ヒコウ
7. ピント
8. セイコウトウテイ

EN-1 打ち上げ花火