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西の空がうっすらと赤みを帯びはじめた午後5時ぴったり、WING TENTにplentyが登場。先日突如発表された、吉岡紘希(Dr)の脱退から約一週間後のステージになる。中学校の同級生であり、バンド結成時からplentyの繊細なサウンドの土台を支えてきた盟友と袂を分かった彼らの「今」を目撃すべく、WING TENTには多くのオーディエンスが押しかけている。静寂に包まれる会場に鳴り響いた1曲目は“人との距離のはかりかた”。なめらかな質感を持った江沼郁弥(Vo&G)のハイトーン・ヴォーカルが会場に響き渡り、オーディエンスは早くもplentyの世界にどっぷり浸かっている様子である。
「どうもplentyです……止まりませんよ、plentyは」という江沼の力強いMCの後は、サポートドラマーを紹介。吉岡にドラムを教えていたこともあるという。そして「もう、楽しくいきましょう。あ、別に投げやりではないですよ? ちゃんと真面目に楽しく……ん? まぁそんな感じ(笑)」と、“待ち合わせの途中”で高らかに歌声を羽ばたかせていく江沼。次はリズム隊による少し長めのイントロから、新曲“ふつうの生活”を披露。続いて、「安易なカテゴライゼーション」や「安心のための没個性」を痛烈な言葉で糾弾していくアップ・ナンバー“枠”を熱のこもった演奏でたたきつけ、クライマックスに向けてスパートをかけていく。
そして「ごきげんいかが? ちょっと曇ってきましたね。次で最後です」という江沼のMCに、「もっと観たい!」という声が場内からかかり、それに「じゃあね(笑)」と一言悪戯っぽく返してから“空が笑ってる”をプレイして、ステージを去っていったplenty。これから先、彼らがどのように活動を行なっていくのかは、現時点ではわからない。それでも今は彼らがバンドを続けることを選んでくれたことに、今はただただ感謝したいし、さらに前へと進んでいく意志みたいなものを感じさせてくれるステージだった。 (前島耕)