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定刻、静かにステージに登場した3人。その瞬間、集まった無数のオーディエンスからは大きな歓声に包まれたが、その演奏が始まるや、一瞬にしてその音楽の中にWING TENTはどっぷりと飲み込まれてしまった。透明度の高いヴォーカル、変則的な展開を繰り広げながら静と動とを行き来するバンド・アンサンブル。ROCK IN JAPAN初登場のplentyは、結果としてみれば1曲目の"ボクのために歌う吟"でWING TENTを完全に掌握してしまった。細い体を左に傾けて、声を振り絞るように歌う江沼郁弥(Vo&G)。ゆらゆら揺れながらタフなベースラインを奏でる新田紀彰(B)、ダイナミックなリズムを鳴らす吉岡紘希(Dr)。3ピースというシンプルな編成ながら、彼らの音楽はどこまでも深遠で、曲を重ねるごとにずぶずぶとその音楽世界へといざなっていく。曲が終わるたび、ワッと歓声を上げるオーディエンスの大きな拍手に、「ありがとうございます」と応えた江沼。聴き手を圧倒する衝動的なサウンドと、「自分たち夏フェスって初めてでして、フェスの過ごし方がわからなくて……まあ、言うことでもないか(笑)」とどこかたどたどしいMCとのギャップがなんともおかしい。満員のWING TENTをステージから見回して、「ホントに人がいっぱいで……今日、人いないんじゃないかと思ってたんですけど、やってみるもんですね。ありがとうございます」と笑う江沼。実に不思議な温度感を持ったバンドである。バックライトに照らされて、豪快なバンド・アンサンブルを繰り広げた"拝啓。皆さま"、エモーショナルなヴォーカルがオーディエンスの胸を貫く"少年"と続けざまに演奏し、「楽しかったです。最後の曲です」と"枠"でライヴはフィナーレ。聴き手の胸に深い余韻を残す、渾身のライヴだった。(大山貴弘)