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厳しい日差しを降り注ぎ続けた太陽が西に傾きかけた時間帯、安藤裕子は優しくも強い歌声でオーディエンスの胸を撃ち抜いた。陽光を全身に浴びながら、風に舞うように少し揺れて歌う彼女の歌声は、SOUND OF FOREST中を夢の世界に連れて行くように優しく響く。しっとりと艶っぽい歌声とラストに見せたポエトリー・リーディングが印象的だった新曲や、ロック・フェス映えするアタック感の強いドラムとサウンドで演奏した“エルロイ”など、1曲ごとに表情を変えながら、安藤裕子の楽曲の世界に深く誘なっていくパフォーマンスに、オーディエンスはどんどんと引き込まれていった。風に髪をなびかせながら、遠くを見つめて歌う彼女は、まるで音楽そのものが人格を持ったかのように華麗だ。

「こんにちは、安藤裕子です」とMCをすると、フィールドからは大きな拍手と共に「かわいい!」「元気?」と温かな声が上がる。そのひとつひとつに「ありがとう」「まあまあ」と笑顔で答えていく彼女。安藤裕子とオーディエンスの距離感の近さを感じさせる一幕だ。「今日は先輩の音楽の力を借りながら、バンドのメンバーと共に、皆さんに楽しい音楽を届けられたらと思います」と語って演奏したのは、くるりの“ワールズエンド・スーパーノヴァ”のカヴァー。軽快に跳ねるビートとピアノの旋律を伴って、透明感の中に強い感情の色を灯した歌声が、SOUND OF FOREST中のオーディエンスの胸に染み渡っていく。太陽の光が少しずつ優しさを取り戻していく夕暮れ時に、彼女の歌は本当に映える。

甘く優しいトーンで歌ったかと思えば、ハッとするほど力強くしなやかな声で圧倒したり、様々な表情のヴォーカルでオーディエンスを魅了した全5曲。最後は息を切らしながらメンバーを紹介して、「ありがとうございました」とステージを去って行った彼女。まるでSOUND OF FOREST中が優しい夢に包まれたような一時だった。(大山貴弘)