メンバーもMCで言っていたが、彼女たちは本当に「泥臭く」「地道に一歩ずつ」その活動のフィールドを広げながら、9年間頑張ってきた努力家たちだ。短パンにシャツゼッケン、お化粧禁止という姿で活動していた時期もあったが、日本武道館に立つ東北産は、まさにアイドル!なふわふわでかわいい衣装だけでなく、最新アーティスト写真のメンバーそれぞれが希望を出して作ってもらったという一人ひとり違った衣装を見せてくれた。後ろには大きなスクリーンがある大きなステージと花道に中央ステージ。大量のスポットライトを浴びながら眼の前の皆産(ファンの通称)と真っ直ぐに向き合う9人は、あの頃の面影はなく、まさにかわいくてかっこいいアイドルに成長していた。
ステージには東北産名物が散りばめられ、本編の途中には仙台弁こけしが会場を盛り上げるなど、東北を背負ってステージで戦い続けている彼女たちの姿にも感動したし、かわいいパートとかっこいいパートそれぞれで見せる瞬間瞬間の表情と仕草に沼らされた、最強のライブだった。
今日で最後の披露になると告げられてから歌われた“3000days”は、彼女たちのこれからの歴史の中でもひとつの伝説の瞬間として刻み込まれるだろう。
個人的にライブのパフォーマンス以外にも心を震わせた場面がいくつもあった。それは、皆産とメンバーとのコール&レスポンスの熱量。後半戦前のMCでメンバーと会場全員との円陣と掛け声──これこそ、東北産がファンと作り上げた絆を、夢の武道館で実現させたことを強く感じたし、痺れないわけがない。最後の最後でわかったステージの階段数が9段だったこともそうだ。そういう演出も9人の決意と絆を感じられる。
最後のあいさつで、メンバーが「ありがとうございましたー!」と感謝を伝えたあとの、皆産の会場を揺らすほどの「ありがとうございましたー!」の声を一生忘れないだろう。
10周年に向けた10の発表もあり、その中のいちばん大きなトピックスとして、エイベックス・トラックスからのメジャーデビューが発表された。待望のメジャーデビューではあるが、その発表を見て私は、この記事のタイトルの通り、日本武道館は彼女たちにとって、ただの通過点にすぎないと確信した。この歴史のいちページを目の当たりにできて最高でした。(岩田知大)
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