観客を楽しませたい!という矢印がステージからぎゅんと伸びているのが見えるほど全身全霊なシンジュ(Vo)のパフォーマンス。6人が紡ぐ音だけで曲の情緒を表現するアンサンブル。とにかく「今」にフォーカスして全力を注ぎながら、とらえどころのない愛や年を重ねるにつれて失ってしまったピュアネスという「彼方にあるもの」を歌う、そのコントラストによってJIJIMが醸し出す「ノスタルジー」がより際立っていた。
涙が出るのは悲しいときだけじゃなくて、嬉しくて楽しくて心がいっぱいになって泣く、という時もあると思う。JIJIMのライブはまさにそんな感覚で、音に混ざって笑い合いながら観終わる頃にはどこかセンチメンタルな気持ちになっている、そんな不思議なパワーがあった。(畑雄介)