ヒップホップが史上初のメインアクトに! 誰もが納得の最強ラインナップが結集した2022年スーパーボウル、ハーフタイム・ショー

ヒップホップが史上初のメインアクトに!  誰もが納得の最強ラインナップが結集した2022年スーパーボウル、ハーフタイム・ショー - rockin'on 2022年4月号 中面rockin'on 2022年4月号 中面

エミネムに、ケンドリック・ラマードクター・ドレースヌープ・ドッグに、メアリー・J.ブライジという超重量級スターが結集した今年のスーパーボウル、ハーフタイム・ショーは、史上最高にして最強。アメリカ国内だけでも約1億人が観るSoFiスタジアムの舞台は、誰にとってもキャリアの頂点と言える瞬間だ。

今回特別だったのは、なんとヒップホップがメインアクトになるのは史上初だったこと。ドレーも「今ヒップホップは世界で最も聴かれているジャンルだから、ヒップホップの力をNFLに見せつける」と力説していた。また、スーパーボウルのLA開催は29年ぶりだったため、西海岸ラップの30年とLAへのラブ・レター的な内容となった。会場にN.W.A.からケンドリックの地元でもあるコンプトンの地図が描かれ、伝説の建物が建ち並び、その上でパフォーマンスが繰り広げられた。

自ら700万ドルも投じたというドレーは、スヌープの“ザ・ネクスト・エピソード”のビートが鳴った瞬間に余裕の笑顔で、トゥパックの“カリフォルニア・ラヴ”で西海岸な気分を盛り上げる。そこへサプライズで50セントがMV同様逆さ吊りで登場し“イン・ダ・クラブ”をパフォーマンスしたから最高。オールドスクールなメンツが最大のヒット曲を惜しみなく披露した。

“ヒップホップ・ソウルのクイーン”、メアリー・J.も“ノー・モア・ドラマ”を魂を曝け出すように熱唱し、ケンドリックが、コンプトンをラップする“マッド・シティー”とBLMムーブメントのアンセムでもある“オールライト”をキレが良いミリタリー的なダンスと片手袋でマイケル・ジャクソンへのオマージュのように披露した。

そして最大のスター、エミネムによる最大のヒット曲“ルーズ・ユアセルフ”。人生最大の勝負をかけたこの日の切迫感を代弁するような曲は、この大舞台に相応しく大興奮。サプライズで登場したアンダーソン・パークのドラムが目に入らなかったほどだ。

しかしその後、エミネムが跪いた! これは黒人差別と警察の不当な暴力に抗議したコリン・キャパニックへの支持表明で、翌日最大のヘッドラインとなった。事前に跪かないよう指示されていたという噂もあり、ドレーも“スティル・D.R.E.”で《いまだ警察は好きじゃない》というリリックをラップしないよう指示されたという噂もある。NFLは問題ないと言っているが、現実にはキャパニックは2016年以来所属チームがない。また、NFLの選手の70%は黒人だが黒人のヘッド・コーチは最近まで0。ようやく雇われたブライアン・フローレスは1月に解雇され、現在NFLを相手取り人種差別的な雇用慣習に訴訟を起こしている真っ只中なのだ。

最後に全員が結集した際は、リアルなヒーローの姿に感動した。が、今回のハーフタイム・ショーは、レジェンドによる出し惜しみない祝福のエンタメでありながらも、ヒップホップだからの批判も込められていたところがさらに史上最高だった理由なのだ。 (中村明美)



2022年スーパーボウル ハーフタイム・ショーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

ヒップホップが史上初のメインアクトに!  誰もが納得の最強ラインナップが結集した2022年スーパーボウル、ハーフタイム・ショー

rockin'on 編集部日記の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする