2025年、イーノが探求するのは“夢”と“空間”。新たなコラボレーターとの協働で生まれた新作について、思索のすべてを明かした記者会見録!

2025年、イーノが探求するのは“夢”と“空間”。新たなコラボレーターとの協働で生まれた新作について、思索のすべてを明かした記者会見録!

現在発売中のロッキング・オン8月号では、ブライアン・イーノ&ビーティ・ウルフの記者会見録を掲載しています。
以下、本記事の冒頭部分より。



●『Luminal』は「ドリーム・ミュージック」、『Lateral』は「スペース・ミュージック」とのことですが、このコンセプトの由来は?(日本)

イーノ「『スペース・ミュージック』の意味は、外宇宙、星々の存在する宇宙の方ではないんだ。一種の水平空間(space)を意味していた。野外の、広大なランドスケープの中にいる状態だね。『スペース・ミュージック』と呼ぶことにする前は、私たちは『ランドスケープ・ミュージック』と呼ぼうかと考えていたはずだ。横にワイドだが縦はあまり高くない、風景画のようなものだね。そういう発想だったんだ、ワイドなフィーリングのある音楽であるべきだ、と」

ビーティー「地平線みたいな」

イーノ「そう。聴いているうちに広々とした景色を眺めている気分になる音楽、恐らくそういうものじゃないかな。で、もう1枚——あれを『ドリーム・ミュージック』と呼んだ記憶はないんだが(苦笑)、(ビーティーに向かい)そうだったっけ?」

ビーティー「(笑)ええ」

イーノ「(苦笑)失礼。まあ、もっと心理的で内的な音楽という発想だね」

ビーティー「最終的にあれらの楽曲に落ち着いたけど、『Luminal』に入るかもしれなかったピースは他にも沢山あったし、数々の夢想から選び出してひとつにまとめる、というのに近かった。だから色々交じっているし、〝Never Was It Now〟のように一種ディストピア的な悪夢もあれば、〝Milky Sleep〟はもやっとした乳白色の眠りに浸りたい、という強い願望。それって一種麻薬性のまどろみと言えるし、ほら、私たちはいつも麻薬をやっているから(笑)。それに、もっと希望に満ちた未来のリアリティを想像する曲もある」

イーノ「——断っておくと、ビーティーが『私たちはいつも麻薬をやっている』と言ったのは、あくまで冗談だからね(笑)! 麻薬はやらないよ。今飲んでいるこのお茶だって、カフェインすら入ってない。麻薬の入り込む余地は一切ないから(笑)」

●この作品では、該当する言葉が英語にない感情状態を探ったそうです。そうした、各文化固有の、名状しにくいフィーリングに興味を抱いたきっかけは何ですか?(メキシコ①)

ビーティー「私の母は1970年代に自己主張トレーニング、自分の感情を表現するための言葉を学ぶ訓練を人に教えていて。だから子供に言葉を教えるのもとても上手で、それを使って自分の感じていることを表現できるようにしてくれた。で、ブライアンと感情全般について話していた時、アート制作ってほんと、感情を生み出すのに似ているよね、という話になって。自分が子供だった頃以降、他の新種の感情で、今やちゃんと名前もあるものがあるに違いないと思ったし、それらを探すことにした。いわば『感情の辞書』はどんな感じかなとネットをチェックしてみたら、これがとてもベーシックで。実質、私の子供時代のままだった。でも、きっとあるはずだと思い、調べていったら、様々な言語の中にそれらが見つかり始めた。分かりきった例だけど、ネイティブアメリカンの言語には色々なことを表現する言葉がもっといくらでもある。その多くは名詞ではなく動詞だし、おかげでこちらの物事の見方も変わってくる。というわけで、言語はいかに私たちの私たち自身と世界の扱い方を形作るものか、そこに魅せられたというか。かつ、自分の感じていることを言葉で述べる方法がこれしかないとしたら、それによって自分たちはどれだけ制限されているんだろう? 他の人々とコネクトするのがどれだけ阻止されているんだろう?という点にも気づかされた」

イーノ「今年出版した『What Art Does〜』という本でも述べたことだが、感情の数々は実際、非常に、とても重要なんだ。科学にありがちなのは、感情は数値化も、命名も、比較も難しいし、概して話題にしにくいものだ、という見方でね。したがって、多くの研究対象から外されてしまう。ところがアーティストにしてみれば、彼らの仕事は人の中に感情を掻き立てること。正直、唯一の仕事がそれだよ。アートで大事なのは、技術的な類いの情報の伝達でも、あるいはプロパガンダでもない。つまり、社会的な類いの情報がキモではない、と。だから私は、アートというのは、何らかの感情を抱くチャンスを提供することなんじゃないか、そう思っている。さて、懐疑的な連中は、その意見に対して『それはあまり重要とは思えない。感情はそこまで重要ではない』と言うだろう。だが、よく考えてみると、感情は我々の第一アンテナなんだ」(以下、本誌記事へ続く)



ブライアン・イーノ&ビーティ・ウルフの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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