並外れた才能でリスナーを惑わすポップシーンの異端児:ロード。6月リリース予定のニューアルバム『ヴァージン』に期待高まるーー


前作から4年ぶりとなる4作目『ヴァージン』を6月27日にリリースするロード。先行シングルとして発表された“ホワット・ワズ・ザット”はデビュー曲“ロイヤルズ”以来となるアメリカSpotifyチャートの1位を獲得。この4年の間にファンのロード熱が高まり切っていることが伝わるチャートアクションだが、それも無理はない。

異端にして新たなインディエレクトロポップの王道をいきなり築いてしまったデビュー作『ピュア・ヒロイン』。大文字のポップの世界、そのモンキービジネスの渦中に否応なく呑み込まれる中での痛みを描きつつ、それを跳ね返すかのように音楽的にはむしろ一層凛々しく逞しいビートを獲得した2作目『メロドラマ』。

一方、前作『ソーラー・パワー』はやや性質を異にしていた。タイトル通りの太陽崇拝という生命力に満ちたコンセプトに反し、綴られるのはむしろ癒しを求め逃避に向かうような言葉達。そして、楽曲面ではビートよりもアコギ中心の生音を優先したサウンドデザインが構築されるチル志向に。ビートを組み、メロディを書き、歌う。そんなごく当たり前のような3つのプロセスを、決して切り離し得ない純度と強度で行うことができることこそロードという作家の強み。だとすれば、フォークに接近したからこそ開いた新たなメロディの扉もいくつかあるものの、その3つのつながりがややちぐはぐになってしまった作品、そんな風に言うこともできるかもしれない。

だからこそ、『ヴァージン』への期待は大きい。音数を絞ったビートに乗せロードのボーカルが高らかに響き渡る“ホワット・ワズ・ザット”は既に、我々が最も鮮烈に思い描くロード像を今日的な形へと更新してみせている。

ジッパーと子宮内避妊具が写った骨盤のX線写真という強烈なアートワークからも伝わる通り、本作は単なる処女性=原点回帰を目的としたものではなく、むしろキャリアを積み酸いも甘いも味わった現在の自分を真新しい「ヴァージン」と言ってのける胆力、その心意気をこそ宿したものであるはず。また一回り強く美しくなった我らがヒロインの帰還を歓迎したい。(長瀬昇)



ロードの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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