伝説を更新する夜へ! フー・ファイターズ来日記念――デイヴ・グロールが語り明かした“ロックンロール人生”


現在発売中のロッキング・オン10月号では、フー・ファイターズのインタビューを掲載!
以下、本インタビューの冒頭部分より。



「ニルヴァーナの最後の方は、クリスと俺はライブ会場に着いても、カートとは会えずじまいで、ステージ脇に立って客席の照明が落ちるのを待つところで、やっと姿を目にする有様だった。またあんなふうになるのはごめんだよ」


デイヴ・グロールはとてつもない偉業を成し遂げた──しかも、トレードマークの微笑みを、常に絶やさずに。

それが起きたのは1994年4月5日だった──X世代にとっては、世界中にとどろくほどの衝撃をもたらした銃声が鳴り響いた日だ。体調不良や抑うつ、さらには名声に伴うプレッシャーに悩まされていたニルヴァーナのシンガー、カート・コバーンはこの日、シアトルの自宅でショットガンを手にし、自らの頭を撃ち抜いた。彼の死は世界中のロックファンに消えないトラウマを残した。だが親しい友人や家族、仲間のミュージシャンにとって、そのショックはさらに計り知れないものだった。ニルヴァーナのドラマーとして、カートと行動を共にしていたデイヴは、誰にも慰められないほどの嘆きに沈んだ。

「カートが死んでから1年近く、何のやる気も持てず、方向性も見えなかった」と、デイヴ・グロールは当時を回想する。「自分がやりたいこともわからなかった。他のバンドでドラムを叩こうという気にはなれなくてね。誰とやっても、結局はカートと一緒にやってた時のことを思い出してしまうだろうし。でも最後は、重い体を引きずって、自分のスタジオに向かった。そして、カセットに何曲か録音した。それ以外にやるべきことが思いつかなかったからね。そのテープが、のちにフー・ファイターズのファーストアルバムになったんだ」

 それから17年の時が過ぎた。2011年7月22日、フー・ファイターズのメンバーは、バンドの軌跡を追った新作ドキュメンタリー映画『These Days』(その後『バック・アンド・フォース』に改称)のプレミア上映イベントに臨んでいた。

このプレミア上映に先立つあいさつで、バンドの所属レーベル、コロンビアレコードのトップは、フー・ファイターズを「世界で最も愛されているロックンロールバンド」と呼んだ。これを聞いて誰も笑わなかったところを見ると、的を射た表現だったのかもしれない。
『These Days』には、観る者の心を特に揺さぶる瞬間が2つある。1つ目はフー・ファイターズにとって最新作となる7枚目のアルバム、『ウェイスティング・ライト』のレコーディング中のシーンだ。このアルバムにゲストとして参加したニルヴァーナの元ベーシスト、クリス・ノヴォゼリックがスタジオに現れ、デイヴ、そしてプロデューサーのブッチ・ヴィグに合流する。これでニルヴァーナの金字塔となったアルバム『ネヴァーマインド』の制作に関わった4人のうち3人が再び集結したことになる。デイヴとブッチ、クリスの3人が一緒にレコーディングするのは、実に20年ぶりのことだった。

しかしこの感慨をさらに上回るのが、2008年6月に行われた2回の公演の様子を収めたライブ映像だ。この時、フー・ファイターズは改修を終え、再オープンしたばかりのウェンブリー・スタジアムでのライブにヘッドライナーとして臨んだ。チケットはたちまちソールドアウトとなった。

第一夜のラストでは、花火が派手に打ち上がり、会場に詰めかけた8万5000人が喉を枯らして熱い声援を送る。そんな光景を目にして、トレードマークの笑みが消え、涙にデイヴ・グロールは、この瞬間のとてつもなさを自分の中でうまく処理できないようだ。「教えてくれ」と、彼は腹の底から叫ぶ。「このクソみたいなバンドが、これだけビッグになれたなんて、いったいどういうことなんだ?」

「あれは俺が、毎日欠かさず、自分に問いかけていることなんだ」と、デイヴは思いをめぐらせる。「カートが死んで、カセットテープのデモを完成させた時点では、まさか自分が17年のキャリアを誇るバンドのリードシンガーになれるなんて、1秒たりとも思ったことなどなかった。でも実際、そういう立場になったことで自分が変わってしまわないように、すごく気をつけてきた。謙虚さが大事だというのが俺の信条だからね。すげえギターを弾けるっていうだけの理由で、自分が人間以上の存在だと信じ込んでるミュージシャンを見かけると、どんな時より切実に、『こいつをぶん殴って気絶させてやろうか』っていう気持ちになるね! 『そんなバカな話があるかよ! 本当は自分だってわかってるんだろう?』って」

(以下、本誌記事へ続く)



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