若き日の内なる葛藤がスクリーンで描かれる。映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』公開

若き日の内なる葛藤がスクリーンで描かれる。映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』公開

去年のボブ・ディランに続き、今年はブルース・スプリングスティーン。映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』(日本公開11月14日)で、ロックアイコンが再びスクリーンに現れる。9月30日のNY映画祭では本人も登壇し、「今のアメリカはまだ“希望と夢の国”だ」と語り、“ランド・オブ・ホープ・アンド・ドリームズ”を熱演した。

監督は『クレイジー・ハート』(2009年)のスコット・クーパー。「これは典型的な音楽伝記映画ではなく、ブルースの内面に迫る静かな時間を描いた作品。1981年末から82年初頭、『ネブラスカ』を録音しながら“ボーン・イン・ザ・U.S.A.”を構想していた彼が、幼少期からのトラウマと向き合う特別な瞬間を見つめた」と語る。

主演はジェレミー・アレン・ホワイト。マネージャーのジョン・ランダウをジェレミー・ストロング、父ダグをスティーヴン・グレアムが演じる——いずれも人気/実力ともに現代最高のキャストが集結した。撮影にはブルース本人も頻繁に立ち会い、「俺が横に座っている状態で演じるなんて気の毒だった(笑)。でも最高の演技をしてくれた。特にステージ上の俺の姿を見事に捉えていた」と絶賛。

ギターも歌も未経験だったというジェレミー・アレン・ホワイトだが、内面の葛藤や静けさを見事に表現。ブルース自身も「模倣ではなく、心理の奥に踏み込む直感的な演技だった」と太鼓判を押す。

成功の光ではなく“闇”と向き合うことで、ブルース・スプリングスティーンという存在をより深く描き出す今回の映画。そしてその中心にあるアルバム『ネブラスカ』は、ブルースのキャリアの中でも特に異質で、ファンにとっても長く謎に包まれた作品。荒削りな録音の中にこそ、彼の孤独、誠実さ、そして創造の衝動が刻まれている。さらに今回の映画では、アーティストとしての制作過程のみならず、ブルースのトラウマの原因となる父との関係性、そしてブルースを支え続けたマネージャー、ジョン・ランダウとの深い信頼関係といった人間模様も描かれる。『ネブラスカ』という“静かな叫び”を通して、ブルース・スプリングスティーンという人間の核心が浮かび上がる。(中村明美)



ブルース・スプリングスティーンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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