日経ライブレポート 「Dragon Ash」

とてもスピード感のあるライヴだった。2時間を超える内容だが、あっという間に終わってしまった感じだ。最新作「FREEDOM」からの曲が主体で、最も新しいバンドのモードがリアルに伝わって来た。アルバム・タイトルからも分るように、前向きで力強いメッセージを持った作品である。

実は、彼らがこうしたタイトルのアルバムを作るのは、99年に発表された大ヒット作「Viva La Revolution」以来の事だ。200万枚を超えるセールスを記録したその作品を発表した後、内省的で実験的な作品が続く。予想を超えた成功は、メンバーを巨大なストレスの中に連れて行く事になった。そのストレスの中で闘いながら、彼等は質の高いアルバムを作り続けて行く。ただそれは、どこか重く文学的で、決して200万枚といったメガセールスを狙えるものではなかった。

しかし徐々にバンドは外に向かう攻撃性とメッセージ性を回復していく。もともとミクスチャーという、いろいろなジャンルの音楽を融合したスタイルを持つバンドだが、近年はラテンの要素を大きく取り入れた独自の演奏スタイルを作りあげていた。ラテンの持つ高揚感、ロックのスピード感、ヒップホップのメッセージ性、そうしたものが一体となった、ドラゴンアッシュにしか作れない世界が完成したのが最新作「FREEDOM」である。

今回のツアーでは、その世界観がしっかりと表現されている。一時は暗かったステージの照明も、まさにラテン・フレーバーな明るい色彩に変わり、アッパーなリズムの曲が続けざまに演奏されていく中、ライヴ会場の温度はどんどんあがっていく。明らかに新しい時代にドラゴンアッシュは入った。

5月8日 ZEPP TOKYO
(2009年5月26日 日本経済新聞夕刊掲載)
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