ロッキング・オン最新号『80年代ロックアルバム100』編集後記より

ロッキング・オン最新号『80年代ロックアルバム100』編集後記より
80年に18歳だった僕にとって、ポストパンク/ニューウェイヴこそがロックそのものだった。今の視点で語るジャンルとしての「ポストパンク/ニューウェイヴ」ではなく、77年にパンクによって過去のロックが無効化して更地になったところで新しく始める新しいロック、それがポストパンク/ニューウェイヴだった。

ポストパンク/ニューウェイヴは「個」と「拒絶」の音楽だった。個と拒絶の感覚だけでミニマルに鳴っていた。そのサウンドデザインはシャープで、感情は冷めていた。その場所から見た70年代のロックのラブ&ピースは気持ち悪く思えたし、その次の90年代のグランジも被害者意識や苦悩のベタつきが気になって仕方がなかった。青春時代に刻み込まれた感覚の支配力は恐ろしい。今でも僕はその感覚から抜けられない。

個と拒絶の感覚は、他人から見れば暗く見えるが、本人の中では輝いている。それはキュアーやキャバレー・ヴォルテールの音楽が「暗い」と評されても好きな聴き手にとってはポップに聴こえるのと同じだ。ポストパンク/ニューウェイヴとはジャンル名ではない。そういう感覚のことだ。(山崎洋一郎)
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