09年に結成し、1度しかライヴをしたことのない状態でRO69JACKで入賞したSuck a Stew Dry。昨年リリースされた1stEP『世界に一人ぼっち』では、シノヤマコウセイ（Vo・G）が手がける楽曲の、心の闇を素直に吐き出しながらも実にキャッチーなメロディで聴き手を魅了していく様に驚かされた。タワレコ限定シングルとなる今作1曲目“アイドントラブユー”では、《ダーリンアイラブユー》と繰り返されるサビと軽快なサウンドが印象的で、途中で入るハンズクラップも人懐っこい。しかし《月曜日の朝に僕は一人友達を失くして》から始まる2曲目の“距離感の部屋“では人との関係性における不器用で複雑な心情がフツフツと描き出されている。《百円のカッター》なんてワードも飛び出し、軽い気持ちで近寄るなという雰囲気で威嚇しながらも、楽曲を縁取るシンセの音色が温かくて心はギュッと掴まれたままだった。雄弁なバンドサウンドは心の闇を内包したまま鮮やかに様々な色を纏い、聴く者の手を掴んでは駆け抜けていく。それは少し乱暴だけれど、この人懐っこい狂気にもっと振り回されてみたい。（上野三樹）