3年前となる前作『見えざる帝国//三日月』はレコーディング拠点をベルリンからアリゾナの砂漠に移し、厳しい環境の中で彼女ならではのリリカルな歌声を巧みに反響させていたが、このスタジオ・フル・アルバムとしては通算5枚目となる『KIN』はLAでトニー・ホッファーをプロデューサーに迎えて作られた。そんな外的要因のせいもあってか、この新作は安らぎと挑戦的な気持ちが絶妙にバランスされている。
スコットランドを代表するシンガー・ソングライターであり、曲そのものの美しさと丁寧なパフォーマンスに流れる凛とした空気感が、どんなアプローチをとろうともブレないところが良いし、話題となったジェイムス・ベイと一緒に曲を書きデュエットも披露している“トゥー・ウェイ”でも印象は変わらない。ややディープなサウンドの中で力強く、ナイーヴな歌声を絡め合っていくところなど耳をとらえるし、ビート感の強い“イーヴル・アイ”や“ラン・オン・ホーム”、ひたすら美しいタイトル曲の“キン”と、いつものようにヴァラエティにも富んでいるのだが、ジャケットにあるようにカラフル度が高くて高揚感に包まれる。(大鷹俊一)
凛とした華やかさ
KT TUNSTALL『KIN』
発売中
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ALBUM