2012年にデビューして以降の5年間の軌跡を辿れるベストアルバム。様々な曲を聴いて実感させられるのは、家入レオの歌声が持っている桁外れの魅力だ。音程、リズム感、声量など、シンガーを評価する上でのポイントはいろいろあるが、そんな中でも声質というやつは譜面では表せない漠然とした要素でありながらも、先述のテクニック的なポイントと同等、あるいはそれ以上と言ってもいいくらいの重要度を帯びている。彼女の声の特色を端的に言い表すならば「さり気なさ」ということになるのだろうか。感情過多になることはない品の良さを漂わせつつ、豊かな情感を滲ませるこの味わいは、名水を飲んだ時のような清冽な感動に近いのかもしれない。凛々しいエネルギーに満ちている“僕たちの未来”、清々しい風が吹いてくるかのような新曲“それぞれの明日へ”、15歳の時に作ったのだという事実に改めてびっくりしてしまう“サブリナ”など、あらゆる曲が圧倒的に心地好い。そして、5年間でここまで多彩なきらめきを放つことができた彼女の今後の姿を想像すると、心底わくわくすることができる。（田中大）