サンダーキャットの酩酊ポップ作

サンダーキャット『ドランク』
発売中
ALBUM
とても甘美な歌声とポップなマインドの持ち主であるサンダーキャットは、そこに超絶ベース・プレイを捻じ込むことでこれまでの個性的なソロ作品群を生み出してきたようなところがあったが、約3年半ぶりとなる今回のニュー・アルバム(EPを1枚挟んでいる)はフライング・ロータスが関わっているわりに、刺激的なビートはなりを潜めている。まず驚かされたのは年明けに公開された新曲“ショウ・ユー・ザ・ウェイ”で、マイケル・マクドナルドとケニー・ロギンス(!)の歌声がフィーチャーされたAOR/フュージョン・テイスト全開の素晴らしいナンバーになった。レトロなエレポップ感が楽しい“ジャミールズ・スペース・ライド”の作曲も白眉だし、序盤の“バス・イン・ジーズ・ストリーツ”に始まる白昼夢のようなハーモニー・ポップにも度肝を抜かれるだろう。ベーシストとしてのサンダーキャットを堪能したい人には少し期待外れなところもあるかもしれない(それでも“アー・アー”のように強烈なプレイを聴かせる曲も含まれてはいる)が、酩酊感というキーワードを軸にポップ・ミュージックの幻想世界を自由に飛び回る彼の姿と、ぜひ出会って欲しい。(小池宏和)