当時隆盛を誇ったグループ・サウンズやフォーク群をことごとく戦慄させるかの如く響いた、ダークでメランコリックなアレンジ。プログレから何からあらゆる音を通過した今の耳で聴いても、フルートやハープシコードを効果的に使った不穏なアンサンブルや、内省を重力崩壊させるような“からっぽの世界”。早川義夫の言葉は、触れる者すべてを背徳の領域へ引きずり込むバイブに満ちて響く。
デビュー40周年を記念して、『ジャックスの世界』『ジャックスの奇蹟』の2枚のアルバムのリマスター盤に加えて、ラジオ・セッションやら放送時のナレーション音声まで収録したボーナス・ディスクをコンパイルしたボックス・セット(しかも紙ジャケ&SHM-CD仕様!)が今作。だが、今作は「元ロック少年のお父さんたちの垂涎もののアイテム」などでは決してない。今から40年前、「心の暗黒」を可視化し再現する――というトライアルが、他でもないここ日本で行われ、現在に連なるロックの「歴史」の原点となっていることの証明だ。無垢な衝動を持った若いリスナーこそ、この音と共振するに相応しい。(高橋智樹)