時雨といったら期待してしまう、スピード感のある激しい楽曲ではない。淡々としたミディアム・テンポの8ビート。荒野の先を描くような枯れ果てたギターのアルペジオ。焦点を失ったように漂うフィードバック。けれど、音から導かれる世界観のテンションにまったく手加減はない。もう八百長や出来レースはいいだろう、そう音が雄弁に語っている。そして、約17分の旅を経ることでしか辿り着けない場所へ、確かに連れていってくれる。その旅はあっという間だ。
つまらなければ、ぶっ壊してしまえばいい。音を通して感じてきたそんなメッセージが、どんどん具体的な方法論になりつつある。興奮する。(古川琢也)