今年6月16日にTHE ORAL CIGARETTESが初めて日本武道館で開催したワンマンライブの模様を収録した映像作品。控えめに言っても、この日のオーラルは完璧だった。ライブの位置づけとしてはアルバム『UNOFFICIAL』のレコ発ツアーの追加公演なので、セットリストはアルバム曲が中心。だからこそ彼らはその場所でバンドの集大成ではなく、完全無欠の「今」を提示することで、自らが歩んできた過去をすべて肯定しようとしていた。ライブの後半、「キラーチューン祭り」と題したコーナーで”Mr.ファントム”や“起死回生STORY”といったライブアンセムを連発しながら、山中拓也（Vo・G）が当時どんな想いでその曲と向き合っていたかを振り返る場面がある。そして“エイミー”で「あなたの人生を肯定したい！」と叫ぶのだ。そこで肯定したかったのは「あなたの人生」でもあり、「自分自身の人生」でもあったのだと思う。そんな山中がステージから放つ一語一句を固唾を呑んで見守るお客さんの姿を画面越しに見ながら、彼らこそ新時代のロックシーンを牽引するカリスマに相応しいと心から思った。（秦理絵）