仮想敵はMJだった

デフ・レパード『ヒステリア(30周年記念3CDデラックス・エディション)』
発売中
ALBUM
3CDデラックス・エディション

1980年代は、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルが最も大衆化した時代だった。その代表例のひとつが、デフ・レパード『ヒステリア』だった。デフ・レパードは、アイアン・メイデンと同じく80年代初頭のニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルのムーブメントから登場したバンドである。だが、ゴリゴリのメタル道を進んだアイアン・メイデンとは対照的に、デフ・レパードはメタルの枠にこだわらないポップ化の道を選んだ。その結果、生み出されたのが、全世界で2500万枚超を売り上げた大ヒット作『ヒステリア』(1987年)だった。今年10月に彼らは来日し、同アルバムの全曲再現ライブを行う。それにあわせ、『ヒステリア』30周年記念エディションの1CDと3CDが、それぞれ初めて国内盤化される。3CDには同作発表後のライブが収録されている。

アルバムのプロデューサー、マット・ラングはマイケル・ジャクソンを仮想敵として、シングル・ヒット連発のアルバムを作ろうとメンバーに呼びかけたという。メタル・バンドらしくない発想だが、実際に『ヒステリア』は全12曲中7曲をシングル化して成功した。ちょっとラップ的なボーカルの“シュガー・オン・ミー”、バラードの“ラヴ・バイツ”、トライバルなリズムで途中にノイズのセクションがある“ロケット”など様々な曲調が揃っていたが、どのシングルにもキャッチーなコーラスが入っていた。

自動車事故で左腕を失ったドラマーのリック・アレンが、特注エレクトロニック・ドラム・キットで復帰して初めてのアルバムである。だが、収録曲は悲劇を感じさせないポジティブな響きを持っている。メタル・マニア向けのヘヴィさやテクニックではなく、親しみやすい大らかな曲調でひきつける、間口の広いアルバムだ。(遠藤利明)



『ヒステリア(30周年記念3CDデラックス・エディション)』の詳細はUNIVERSAL MUSICの公式サイトよりご確認ください。

デフ・レパード『ヒステリア(30周年記念3CDデラックス・エディション)』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」10月号に掲載中です。
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『rockin'on』2018年10月号