ジャズからヒップホップという持ち前の世界観とさらなるトータル感

ロバート・グラスパー『ファック・ヨ・フィーリングス』
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ALBUM
ロバート・グラスパー ファック・ヨ・フィーリングス

今年のサマーソニックにも出演し、極上のパフォーマンスを披露してみせたロバート・グラスパー。ジャズからR&B、ソウル、ヒップホップへと流動的に形を変えていく、どこまでも奥行きの深いパフォーマンスだったが、まさにあの時のパフォーマンスを彷彿とさせる内容となっているのが今回のこの新譜だ。

メンバーはロバートのほか、サマーソニックにも引き連れていたドラムのクリス・デイヴ、ベースのデリック・ホッジのトリオが軸となっていて、そこにやはりサマーソニックにも登場したヤシーン・ベイ(モス・デフ)のほか、ビラルやハービー・ハンコックら20組ものアーティストが客演することとなった。しかし、このアルバムのセッションのために時間をかけたわけではなくて、実は5月のとある週末に参加者全員を招集し、その2日の間に全収録トラックをレコーディングしてしまうという、かつてのジャズ・アーティストのアルバム・セッションを踏襲した、一気に作り上げたものになっている。したがって、ここではさまざまなスタイルが取り上げられていて、それぞれに多様な個性を持つアーティストが共演を繰り広げているが、不思議と全体を包み込む空気感があって、その流れるような統一感が素晴らしい。もちろん、このアルバムの統一性は端的にロバートとクリスとデリックのトリオとしての演奏が基本にあるし、そもそもさまざまなスタイルを楽曲に込めてアルバムのなかに取り込んでいくというのはロバートの身上といってもいいアプローチでもある。ただ、2日間というごく限られた時間のうちに作り上げたことも、このアルバム全体を貫くこの特別な空気感を生み出しているはずなのだ。

実はロバートは長く在籍していたブルーノートから今回、ロマ・ヴィスタ・レコーディングスに移籍していて、今作ではその新しい門出を祝うためこの2日間という緊急セッションを打ち出したのかもしれない。いずれにしても、今作の楽曲群はバリエーションの幅の広さと、その表現における懐の深さの両面において素晴らしいものになっているし、聴きやすさと温かみと新鮮さがどの曲においても際立っているところが特徴的だ。ボーカル曲はいずれもコンテンポラリー・トラックとして申し分ないし、“インダルジング・イン・サッチ”やハービーと共演する“トレード・イン・バーズ・ヨ”などの直球のジャズ・ナンバーも素晴らしく刺激的だ。その一方で“ゴーン”のような新鮮な楽曲も混在しているところがロバートらしく、充実した1枚になっている。 (高見展)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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ロバート・グラスパー ファック・ヨ・フィーリングス - 『rockin'on』2019年12月号『rockin'on』2019年12月号
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