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    今この声と音に溺れるべきだ

    ラビリンス『イマジネーション & ザ・ミスフィット・キッド』
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    ALBUM
    ラビリンス イマジネーション & ザ・ミスフィット・キッド

    シーアディプロと組んだねじれたポップ・サウンドが魅力のユニット、LSDでも知られるラビリンスのセカンド・ソロが本作。前作『Electronic Earth』ではどうしてもエレクトロニック・ポップR&Bとしてのサウンドが勝ってしまったところがあったが、今回は7年越しのソロ・プロジェクトとなっただけあり、ラビリンスの独特な密室的ポップR&Bを精巧に作り上げたアルバムとなっていて、その魅力をあますところなく堪能できる内容なのが素晴らしい。

    たとえば、イギリス出身アーティストとしての手癖はあからさまに音として打ち出していないけれども、ゼンデイヤを客演に迎えた“オール・フォー・アス”の脈打つパーカッションのカリブ的フレイバーがとても気持ちよく、その歯切れのよさがたまらない。これはもともとゼンデイヤ主演のアメリカのテレビ・シリーズ『ユーフォリア』のために書いた曲だが、このパーカッションと極端に加工されたキーボードだけで構成されたサウンドと蠱惑的な暗いメロディとの組み合わせがただ病み憑きになるのだ。

    その一方で、“ザ・プロデューサー”では四六時中仕事に励んでいる自身の心境を歌い上げてみせているのだが、このソウル・フィーリングに満ちたボーカル・パフォーマンスが素晴らしすぎる。さらにこの曲の異常なまでにエキセントリックなアレンジもあまりにかっこいいのだ。

    あるいは非常にエッジーなダンス・アンセム“サムシングス・ゴット・トゥ・ギヴ”、どこまでもポップだがソウルフルな“セクシー・MF”など、どの曲も聴き応え満点の出来になっていてすごい。プロデューサー、あるいはパフォーマーとしてこれまであまり派手な動きがなかったせいか今はどこか見過ごされている感があるが、いずれ傑作として必ず見直されることになる名盤だ。(高見展)



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    ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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    ラビリンス イマジネーション & ザ・ミスフィット・キッド - 『rockin'on』2020年2月号『rockin'on』2020年2月号
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