躍るカナディアン・インディの至宝

ウルフ・パレード『シン・マインド』
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ALBUM
ウルフ・パレード シン・マインド

2011年に活動を休止後、5年間のブランクをへて再始動。3年前に7年ぶりとなるアルバム『クライ・クライ・クライ』をリリースして復活を遂げたウルフ・パレード。活発だったメンバーのサイド・プロジェクトも一段落し、ここにきていよいよ本腰を入れてきた模様だ。本作は、その『クライ~』から2年半弱でリリースされる5枚目のニュー・アルバムになる。

10年以上バンドを支えたマルチ奏者のダンテ・デカロが昨年脱退。オリジナル・メンバーの3人で制作されたアルバムとしては1st以来、じつに15年ぶりとなる。前作で華を添えていたホーン隊の参加も今回はなし。プロデューサーにジョン・グッドマンソン(スリーター・キニークラウド・ナッシングスetc)を迎え、かつ、初めての試みとして今回は曲作りからレコーディングまでひとつのスタジオですべてが行われたらしい。

元々、サイケやニュー・ウェイブ、ポスト・パンクからプログレまで呑み込んだ雑食的なサウンドが醍醐味のウルフ・パレード。ただし、本作ではとりわけニュー・ウェイブ要素が顕著で、シンセやMiDiキーボード、電子ドラムが主張するダンサブルなサウンドが印象的だ。トリオ編成に回帰したとはいえ凝った音作りは健在で、“ザ・スタティック・エイジ”をはじめ初期ロキシー・ミュージックジェネシスを連想させる場面も。シンガーの片割れスペンサー・クルグの、ボウイ愛溢れる歌声が映える“アウト・オブ・コントロール”や“ワンダーリング・サン”も素晴らしい。一方、兄貴分のモデスト・マウスに倣うノイジーなギターも聴け、ポップだがタフなサウンドに仕上がっている。アーケイド・ファイアも信頼を寄せるカナディアン・インディの至宝︱その面目躍如たる充実の1枚だ。(天井潤之介)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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ウルフ・パレード シン・マインド - 『rockin'on』2020年3月号『rockin'on』2020年3月号
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