『rockin’on 2009年5月号』でレビューを掲載しているプレフューズ73=ギレルモ・スコット・ヘレンのもうひとつの顔、サヴァス&サヴァラス。南米音楽のルーツ探求路線を鮮明にし、歌を押し出したことでより温かみのある“響き”へとたどり着いた前作『ゴールデン・パラン』(07年)は、S&Sどころかスコット・ヘレンのプロジェクト全体を見渡しても最高傑作と言い切れるほど素晴らしいアルバムだったが、驚くべきことに今回も『ゴールデン〜』に匹敵する奥行きをもった作品である。今作からストーンズ・スローに移籍。マッドリブのレーベルだが、しかしそこで生まれた本作からは、ヒップホップ〜ポスト・ロック的なサンプリング/エディット感覚というよりは人間本来のプリミティブな雑多性、人間同士の交配によって音の色彩を見出していこうというような意思を感じる。音が、というより音のつながりがオーガニックなのだ。だからフォーキーでヌケはいいのに前作以上に混沌としている印象を受けるし、逆によく聴けばじゅうぶん複雑なのに、案外気持ちよく聴き通せてしまう。まったくこの人は、作品を聴けば聴くほど分からなくなっていく。(小川智宏)