その瞬間を照らすポップ

ボーイ・パブロ『ワチト・リコ』
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ALBUM
ボーイ・パブロ ワチト・リコ

古今東西のギター・ポップが10代の少年少女たちに何をもたらしてきたか。そんなことを思い出さずにはいられない、あまりにもキラキラしたデビュー作だ。もうハチャメチャにポップで、若者の甘酸っぱい夢が惜しみなく詰めこまれている。

ボーイ・パブロはノルウェーのベルゲン出身のニコラス・パブロ・ムニョスのプロジェクト。チリ人の両親のもとに生まれ、ローティーンの頃から音楽作りを始めたとのことだが、高校生のときに作った楽曲を収めた17年のEP『Roy Pablo』の時点ですでにビートルズ譲りのメロディ・センスを発揮していた。同作収録の“Everytime”がネットでバズり、一躍有名に……というのは今っぽいサクセス・ストーリーだが、本人は至って着実にソングライティングを磨いてきたようだ。

その成果が表れているのが本作だ。オープニングの“アイ・ホープ・シー・ラヴズ・ミー・バック”からしてアレンジの緻密さがぐっと増しているし、逆に“アイ・ラヴ・ユー”のようなシンプルなアレンジのバラッドでは削ぎ落した歌の骨格そのものの良さで勝負している。また、欧米のポップ・クラシックだけでなく、ルーツのラテン音楽のテイストが洒脱に入っているのがボーイ・パブロの個性だ。

タイトルはチリ語で「ハンサム・ボーイ」の意味だそう。アルバムでは「彼」が経験する恋の物語がときに爽やかに、ときに切なく展開する。つまり、自身が10代に経験し感じてきたことを、架空のキャラクターに託して聴き手と共有すること。それは、夢見がちな子どもたちのために音楽ができるもっとも甘美な行為のひとつであり、その魔法にはギター・ポップがいつだってピッタリだ。ギタポ好きの大人だけでなく、若い世代にこそ聴いてほしい。(木津毅)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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ボーイ・パブロ ワチト・リコ - 『rockin'on』2020年12月号『rockin'on』2020年12月号
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