新陳代謝を続ける4ADの美学

V.A.『ビルズ・アンド・エイクス・アンド・ブルース』
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ALBUM
V.A. ビルズ・アンド・エイクス・アンド・ブルース

日本でも2度の特集イベントが組まれるほど、インディ・ロック好きには馴染み深い英国のレーベル、4AD。本作はその設立40周年を記念したコンピレーションで、18組の現所属アーティストが膨大なカタログの中から好きな曲を選んでカバーしたものだ。タイトルは4ADの看板だったコクトー・ツインズ“チェリー・カラード・ファンク”の歌詞から引用しており、4つのセクションで構成。

古くは81年のバースデー・パーティー(U.S.ガールズによる“ジャンクヤード”)から、最近では12年のグライムス(“ジェネシス”と”オブリヴィオン”の2曲)まで、トラックごとに時空をひとっ飛びする“僕たち私たちの4AD”とも言えるプレイリスト的な流れが見事だし、20年に契約したばかりのスペンサーやドライ・クリーニングといった新人を早速巻き込むフックアップ精神も素晴らしい。

自らもヒズ・ネーム・イズ・アライヴの“ダート・イーターズ”を歌うブリーダーズは、ビッグ・シーフをはじめ3組に指名される敬愛されっぷりで、あの超有名なイントロを禍々しく料理したチューン・ヤーズの“キャノンボール”は白眉。

また、ビング・アンド・ルースがグランド・ピアノだけで再現したピクシーズの“ギガンティック”は、ファンでも原曲を認識するのが難しい音響学的アプローチが逆に新鮮である。ティム・バックリィは厳密には4AD所属じゃないが、ディス・モータル・コイルが過去にカバーした経緯から、ソンがそのDNAを歌心たっぷりに引き継いだ。

なお、アルバムの売上の一部は、芸術や音楽を学ぶことができない子供たちをサポートする団体に寄付される。09年にも傑作コンピ『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』の売上をエイズ撲滅・研究のために寄付した4ADだが、このブレない美学こそ、今も魅力的な才能を引き寄せる理由なのだろう。(上野功平)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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V.A. ビルズ・アンド・エイクス・アンド・ブルース - 『rockin'on』2021年8月号『rockin'on』2021年8月号

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