TVアニメ『チェンソーマン』のEDテーマのひとつ“Deep down”の他にも、“オアイコ”“Ivy Ivy Ivy”“wavy flow”といったタイアップ曲が収録されているミニアルバムだが、Aimerの歌のものすごさを目一杯に堪能できるのがなんと言っても嬉しい。注目するのを特にお勧めしたいのは、抑制を利かせた部分だ。歌や楽器も含めた音楽表現の「上手い」は大音量や音数の多さといった「派手さ」で語られがちだが、実は「淡々としている」とも言うべき抑制された表現にこそ様々なニュアンスが宿る……というのは主観にも左右される部分なので明言は避けておくが、楽器や歌に真剣に取り組んだ経験の持ち主には心当たりがあることではないだろうか？ Aimerの歌に関しても「ハスキーなのに瑞々しい」というある意味矛盾した声から滲み出るエモーションは、儚さ交じりの抑制された表現の時にこそビビッドに煌めく。“Deep down”の序盤やエンディング間際のニュアンスは、ゾクゾクするほど素晴らしい。デビュー10周年を経て、彼女の歌がたくさんの人々に愛されるようになっている理由のひとつは、これなのだと思う。（田中大）

（『ROCKIN'ON JAPAN』2月号より）

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