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ファンクミュージックへの敬愛が土台にあるスガ シカオの音楽が野趣に富み過ぎることなく、スタイリッシュなポップスとして響き渡るうえで、歌声が担っている役割は大きい。エロティシズム、狂気、殺気も度々示す彼の歌声は、優しさを滲ませた時にとても温かい。このような魅力とじっくり向き合わせてくれるのが、“あなたへの手紙”だ。《今度はぼくが救う番だ》というようなフレーズが出てくるこの曲の主題は、端的に言い表すならば「他者に対して優しくありたい」ということだが、懺悔の歌でもある。保身のために見て見ぬ振りができてしまう醜さの告白は、多くのリスナーが抱える罪の記憶と悔恨も炙り出すだろう。しかし、痛むことができる心、流せる涙は、誰かを救う力になり得るのだと歌われる終盤に至った時、未来に光を投げかける希望の歌として収束していく。レバウェルのCMソングだからこその言葉遊びがさり気なく盛り込まれているところも含めて、ソングライターとしてのものすごさも再確認させられる曲だ。(田中大)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年8月号より抜粋)
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