サマーソニックへの大抜擢と異例のシングル日本盤リリースが物語るとおり、彼らに寄せられる期待は生半可なものではない。もちろんこの“サイエンス・オブ・フィアー”の凄まじいクオリティとバンドの実力に疑いはないのだが、ではなぜ、ほかでもない彼らなのだろうか。
テンパー・トラップの音は、理路整然としている。ひとつひとつの音が的確で、たぶんフロントマンのダギーはその音を鳴らした理由をすべて説明できるはずだ。そこにアークティック・モンキーズが出てきたときのような得体の知れなさみたいなものはない。だからこそ強いのだ。ロマンを抱えてひた走るロックンロールでもなく、情動によってシンパシーを求めていくエモでもなく、たとえばリンキン・パークのような完璧な戦略性と機能性によって世界を征服するロック。ファンが好き好んで聴くというレベルのはるか上で、問答無用にシーンを掌握してしまうロック。テンパー・トラップのロックは、そうしたものになる可能性がある。そろそろ、若い世代にそういうバンドが現れてもいい頃だ。いつまでもその座をコールドプレイやリンキンに任せておく必要などないのだから。(小川智宏)