ビッグ・ピンクに関してはデビューEP時から感じていることがあって、それはこのデュオがたとえばMGMTのように画期的であると誤解されているのではないか、ということだ。“ドミノズ”や“トゥー・ヤング・トゥ・ラヴ”といったEPの楽曲には確かに2009年を活写するキャッチーさと意匠(=ギミック)があったし、ホモセクシュアルな雰囲気を狙ったビジュアルにしろ4ADの嫡子臭ぷんぷんな格好良すぎるアートワークにしろ、ITバンド的な戦略が見え隠れして、それは違うだろ~と思っていた。
何より、このデビュー・アルバムを聴けば彼らが極めて純粋でオールドウェイブな人達であることは疑いようがないのだ。有体に言えば全楽曲の8割を占めるのがジザメリとスピリチュアライズドである。リズムは主にマッドチェスターである。ただし、それはある種の嗜好性を持ったリスナーにとっては普遍的な正しさとも直結している。何よりここにはリバーブとディレイでがんじがらめな緊縛を破り、優美に飛翔するいくつもの瞬間がある。それは画期的であるか否か以前に、何回、何百回聴いても断固最高なのだ。(粉川しの)