2007年のジョナ・マトランガ単身来日時に、ファーについて話をした際には、その時点でのラスト・アルバム『ウォーター&ソリューションズ』が、自分と他のメンバーの個性を最高の形で融合できた作品となったので、それ以上のものは作れないと判断して解散したということだったのだが、本作を聴くと「その先はあったんだなあ」と実感する。確かに『ウォーター~』は名盤だが、今あらためて聴くと、バンド崩壊直前のギリギリなムードも潜んでいるように思う。解散後、互いに時間的に距離を置いたことによって精神的な余裕が生まれ、それぞれ各自がシンガー・ソングライターとして、あるいはプロデューサー、ミュージシャンとしてキャリアを重ねた経験も活かしながら再び向かい合うことで、今回さらに完成度の高い作品が生み出されたのだ。90年代オルタナティヴ・ムーブメント末期に解散したバンドの中には、まだまだやれるのではないかと個人的に思う人達が多く、ファーも間違いなくそのうちのひとつだったので、心残りがひとつ氷解したような、実に爽快な気持ちだ。ぜひとも、本物のエモーショナルを味わってみてほしい。(鈴木喜之)