インストやポストロックといったカテゴライズや歌詞の有無に捉われず、独自の音楽性を追求し表現し続けるtoe。今作は、昨年12月にリリースしたアルバムを引っさげて行われたツアーの渋谷公演を収めたDVD。息の合ったプレイや精巧なアンサンブル、重厚でダイナミックなサウンドなどが今作にはしっかりと収められているが、やはり美しいメロディが彼らの魅力だと気づかされる。アコギの音色が豊潤さを感じさせる“Two Moons”、獰猛さを爆発させた性急なリズムの“エソテリック”、アンコールで土岐麻子が歌った“グッドバイ”など、どの曲のメロディにも悲しい記憶や感情を呼び起こす切なさや繊細さがあり、涙がこぼれそうになる。が、それを突き破る彼らの強い衝動や躍動感漲る熱いプレイは、何度も鳥肌が立ってしまうほどカッコいい。副音声ではライブのコメントをしつつ、アントニオ猪木の真似やツイッターの抑揚で多数決を採ったり、シリアスな音楽性とは打って変わってライブのMC同様気ままに楽しむ彼ら。こんな飾らない姿も魅力なんだよなぁ。今作はありのままの彼らを味わえる見事な作品だ。(奥山華代）