聴くほうにとっても、ソロ・アルバムというのは難しい。在籍するバンドが活動中であれば、なおのことである。聴くときに、どうしてもそのバンドの残像をちらつかせながら向き合わざるを得ない。一方で、別物ということも分かっている。当然のことながら、それはレディオヘッドではない。けれど、本作を聴いて湧き上がってきたのは、これがフィルのソロ・アルバムなんだという、新鮮な驚きと納得の両方だった。ソロ作品の温度感まで実に緻密に考えられているのが、レディオヘッドということか。

アコースティック・ギターとフィルの歌を主体にしたベッドルームで作られたような素描のフォーク・アルバム。静謐さを湛えながら、どこかエバーグリーンな響きもあって、陰でもなく陽でもなく、一陣の風を起こしながら幕を閉じる、そんなアルバムに仕上がっている。レディオヘッドのメンバーの発言を見ていると思うけれど、彼らはこうしたオーセンティックなソングライティング感覚を根っこに持ちながら、ああした作品を作る。そして、普遍を常に見続けている。フィルもそんな人なのだ、やっぱり。（古川琢也）