前作はビョークの自宅スタジオでレコーディングされたことで話題を呼んだラタタットだが、新作は200年以上も前から建っている古屋を改造したスタジオで制作したそうだ。それだけにハイテクな機材はほとんどなく、逆にハープシコードやウーリッツァーなどのキーボード楽器が充実していて、そのアナログな雰囲気に沿って、どうやら今作では生ドラムもふんだんに導入しているらしい。確かに。言われてみれば、前作よりオーガニックだし、音数のバラエティもかなり豊富だし、曲によっては、深夜のクラブより昼の野外会場のほうがはまるような解放感を放射しているものもある。ダブ・ビートも導入していたりしている。でも、正直、言われなきゃわからないかも。外見が思い切りハードロックのロン毛兄ちゃんが奏でる、スペイシーでメロディアスなギターが相変わらず主体だし、これまでの2作にあったエッジーな浮遊感はまったく損なわれてない。個人的には、このままのペースで永遠と似たようなアルバムを作って、いつかラモーンズやモーターヘッドやAC/DCのようなバンドになって欲しいのだが、いかなるものだろうか。(内田亮)
新境地なんか築く必要ない
ラタタット『LP3』
2008年07月23日発売
2008年07月23日発売