カジュアルで全く文学的な難解さのない言葉だけでandropの歌はできている。メロディやサウンドやアンサンブルも過剰な装飾を慎重に避けながら自然に耳から心へ、心から体へと染み込むように緻密にコントロールされている。何の違和感もなくJ-POPの中に溶け込み決してノイズを立てない、それがandropの音楽の特徴のひとつだ。一方で彼らの楽曲にはJ-POPに必須の現代的なライフスタイルとリンクするようなキーワードが全く使われていない。あらかじめ本質的なテーマだけを剥き出しにした言葉と音符と音色の連なりだけでできているのだ。
このふたつの特徴が合わさったandropの音楽は、やはり異色だ。いつの間にか親しい仲間の輪の中に紛れ込んでいた心の声だけで語りかけるエイリアン。挨拶その他あらゆる手続きをすっとばし、いきなり無限の愛を証明する無謀なコミュニケーションが、この『door』では炸裂している。その結果、時代の閉塞感を打ち破る問答無用の輝きを持つ“MirrorDance”のような楽曲が生まれた。このドアの向こうを見たいと多くの人に思わせる力がここにある。(古河晋)